2018年11月20日に改正雇用法案が承認され、2019年4月1日より施行されます。
重要な改正点は下記の4点です。
1. 雇用法はすべての従業員が対象となる
2. 雇用法のパート4(残業代)の対象となる従業員の拡大
3. 雇用解雇の枠組みの改善
4. 従業員の働き方の柔軟性を促進
1. 雇用法はすべての従業員が対象となる
現在の雇用法は、月額給与が4,500シンガポールドルを超えるマネジャー/エグゼクティブは適用対象外でしたが、今後は全ての従業員が対象となります(ただし、公務員、メイド、船乗りなど別の法律で規制されている従業員は除く)。
これにより、従来は労使交渉で決まっていた、最低日数以上の有給休暇の付与、祝休日手当、疾病休暇、不当解雇の給与保障などが、上記のマネジャー/エグゼクティブに向けても対象となります。
この変更による、新雇用法の追加適用対象者は、430,000人と言われています。
2. 雇用法のパート4(残業代)の対象となる従業員の拡大
現在の雇用法では、月額給与4,500シンガポールドルまでのブルーワーカー、月額給与2,500シンガポールドルまでのホワイトワーカーは残業代の支給対象となっています。
新たに施行される雇用法では、ブルーワーカーには変更がないものの、ホワイトワーカーは月額給与2,600シンガポールドルまでの従業員が残業代の支給対象となります。
また、ホワイトワーカーの残業代計算のために使用する時給は、従来は月額2,250シンガポールドルまでをベースにしていましたが、こちらも合わせて月額2,600シンガポールドルまでをベースにするよう変更されます。
上記については改正前も改正後もマネジャー/エグゼクティブは対象外となります。
この変更による、新雇用法の追加適用対象者は、100,000人と言われています。
3. 雇用解雇の枠組みの改善
現行では、雇用法の対象となる解雇時の労使間紛争があった場合、MOMが調停者となっていましたが、今後は、Employment Claims Tribunals (ECT)へ移管されます。
月額給与が4,500シンガポールドル以下のマネジャー/エグゼクティブについては、従来は12か月雇用されていない場合、告訴できませんでしたが、この期間が6か月へ短縮されます。
ECTへの移管に合わせて、MOMは、不当解雇に該当する場合に関するガイドラインを後日公表する予定です。
4. 従業員の働き方の柔軟性を促進
現行の雇用法では、マネジャー/エグゼクティブを除く雇用法の適用対象となる従業員が祝休日に働いた場合、従業員側に2つの選択権(給与、一日代休)がありました。
また、月額給与4,500シンガポールドルまでのマネジャー/エグゼクティブが祝休日に働いた場合、従業員側に3つの選択権(給与、一日代休、時間代休)がありました。
新たに施行される雇用法でも、月額給与4,500シンガポールドルまでのブルーワーカー、月額給与2,600シンガポールドルまでのホワイトワーカーは取り扱いに変更はありません。
ただし変更点として、全てのマネジャー/エグゼクティブ、月額給与4,500シンガポールドルまでのブルーワーカー、月額給与2,600シンガポールドルまでのホワイトワーカーが祝休日に働いた場合、従業員側に3つの選択権(給与、一日代休、時間代休)がとれるように変更されています。
この変更により、より多くの従業員が各々の事情に応じた祝休日手当を選択することが可能になります。
また、現行の雇用法では保険料など従業員の給与から控除することが制限されていた項目が、一部なくなることで、従業員が雇用保険を自由に選択できるように柔軟性が広がります。