シンガポール保健省(MOH)は19日、現在実施中のソフトロックダウン(Circuit Breaker)後のビジネス・社会活動の再開について、感染の再拡大を最小限に抑えつつ、「3段階」で徐々に再開していく計画を発表しました。また、国境の再開に関する見込みや、全1~3段階において企業にて遵守すべき安全管理対策(Safe Management Measures)についても言及しています。
【第一段階:Safe-Re-opening】
▼全体
・6月2日からスタート。まずは感染のリスクが高くない経済活動を再開する。
・比較的感染拡大のリスクの高い社会的、経済的な活動や娯楽活動は引き続きストップし、家からの外出はCircuit Breaker時から引き続き、必要な時のみ、マスク着用で行う。
▼経済
・Circuit Breaker中も操業を行ってきた”Essential Services”に追加して、感染拡大リスクの低い環境で稼働する企業からスタートし、段階的に経済活動の再開をしていく。
・製造業については、製造業向けに発行されたガイドラインに従って、完全な生産体制を再開することができる。
・ほとんどのオフィスも再開することができるものの、引き続き可能な限り在宅勤務体制を敷くこと。Circuit Breaker中に在宅勤務を実施した従業員については継続し、明確に必須な場合のみオフィスへの出社をする。
(明確に必須な場合の例)自宅からは使用することのできない特殊なシステムや機器を使用する場合や、契約・取引等法的に必須な場合等。
・雇用主は職場でのSafe Management Measures (安全管理対策)実施義務があり、従業員には遵守義務がある。政府による抜き打ちチェックが行われる予定で、雇用主が安全な職場を提供していない、または労働者が安全な管理措置を守っていない企業は、オフィスの閉鎖措置が取られる可能性がある。
・小売店やその他パーソナルサービスの大多数は、第一段階では再開しない。
・自動車整備、エアコン整備、基本的なペット関連サービス、学校の書店、および制服を販売する小売店のみが再開を許可される。
・5月12日から営業再開を許可されている美容師や理髪店は、基本的なヘアカットサービスに加えて、すべての美容サービスの提供を再開できる。
・飲食店の営業は引き続き配達か持ち帰りのみで、店内での飲食は引き続き禁止。
・全在宅ビジネス(配達/収集モデル)も再開することが許可される。
・第一段階のビジネス再開可企業リストは以下
https://www.moh.gov.sg/docs/librariesprovider5/default-document-library/annex-a05667c7d43454b05b072239ceb582db1.pdf
https://covid.gobusiness.gov.sg/guides/permittedserviceslist.pdf
▼コミュニティ
・Circuit Breaker期間から引き続き、同居家族以外の人との接触は基本的に制限される。
・ただし、別居の両親または祖父母への訪問に限り、1日に1回・同じ訪問世帯からは2人以下の範囲であれば可。
・また、働く両親の育児環境整備の一環として、勤務中祖父母宅に子供を預けることも、同じ訪問世帯から1日あたり2人のまでという制限の範囲内であれば可能。訪問中、両方の世帯の全員が適切な衛生習慣を遵守すること。
・結婚式は、最大10名までであれば実施可。
・礼拝については、個人的な礼拝であれば、同じ世帯の最大5人までが同時に集まることができる。
・洗礼と葬儀については、一度に10人までの範囲であれば実施することができる。
・その他の重要でない活動や懇親会は引き続き禁止。
▼学校
・幼稚園:2020年6月2日から10日までで段階的に完全再開される。
・小中学校:最終学年の生徒は毎日通学し、その他学年の生徒はHome-Based Learning(HBL)と通学を週ごとにローテーションする。
・Junior CollegeおよびMillennia Institute:一度にキャパシティの半分までの生徒を受け入れることが可能。
・高等教育機関(IHL):実習およびラボでの活動は学校で、講義はオンラインで行われる。
・学校やキャンパスでは、全スタッフと生徒はマスクまたはフェイスシールド着用が義務付けされる。
・Co-Curricular Activitiesや非公式教育機関:第一段階中は再開されない。
▼医療
・専門の外来サービス、医療処置、関連医療サービス、地域密着型医療サービス、慢性疾患管理などのヘルスケアサービスについては、患者ごとの処置の必要性と施設の受け入れ可能状況に基づいて再開される。
(必要性の高い処置の例)高度白内障の手術、重度の障害のある患者の関節手術、がんの検査、歯科処置、糖尿病性の足の検査
・インフルエンザの予防接種等も再開される。
・補完的なヘルスケアサービスは、1対1且つ完全予約制で再開が可能。伝統的な中国医学(TCM)の鍼治療は、どのような症状の患者に対しても治療を再開することが可能。
・高齢者に関するサービスや高齢者中心の活動については、感染拡大防止の観点で引き続き制限を行うものの、社会的サポートが必要な高齢者に対しては一部のサービスを再開する。
・障害者向けのコミュニティサービスも徐々に、少人数のグループから再開される。
【第二段階:Safe Transition】
・第一段階での活動増加に伴い、一時的に感染者数の上昇が見込まれるものの、その後数週間にわたって低く安定した推移に転じ、外国人労働者間の感染状況が管理可能な状況となった場合は第二段階(「Safe Transition」)に移行し、徐々に活動を再開する。
▼経済
・在宅勤務が可能な従業員については引き続き在宅勤務体制を取る必要がある。
・ 飲食店、ジム、フィットネススタジオ、非公式の教育機関やEnrichment Centerについては、Safe Management Measures規定を遵守し、顧客に対して安全な衛生環境を提供することがすれば徐々に再開することができる。
▼学校
・状況に応じて、全生徒の通学再開を目指す。
・IHLについても、通学できる学生の数を増やす。
▼コミュニティ
・スポーツ、レクリエーション、屋外施設も、施設のスタッフとユーザーの両方が安全に管理されていることを条件に再開可。
・少人数のグループでの社会活動が許可される予定。
【第三段階:Safe Nation】
・新型コロナウイルスの効果的なワクチン治療法が確立するまでの期間を第三段階とし、第二段階から段階的に様々な規制解除を行っていく。
・大規模感染を防ぐための人数制限は依然として設けられるものの、社会的、文化的、宗教的、ビジネス的な集まりやイベントが再開可能に。
・Safe Distancingを守り、人込みや大規模グループを避ければ、高齢者も日常の活動を再開できる。
・映画館、劇場、バー、パブ、ナイトクラブ等の大規模密閉空間や、スパやマッサージなどの濃厚接触を含むビジネスについても、安全管理を徹底した上であれば再開することができるようになる。
・第一~第三段階の概要資料は以下
https://www.moh.gov.sg/docs/librariesprovider5/default-document-library/annex-c43ac18ad1e064ae18b7f1bdfb16b0bf1.pdf
【公共交通機関】
・多くの人々が仕事や学校に戻っていくにつれ、公共交通機関の混雑が見込まれる。
・まずは企業は、ピーク時の通勤を最小限に抑えるために、勤務時間をずらす等の対策を講じる必要がある。
・また、公共交通機関内ではマスクを着用し、会話や携帯電話での通話を控え、衛生環境を良好に保つこと。行政としても、バスと電車の掃除を強化し、人が触れる表面には抗菌化学コーティングを行っていく。
【国境再開】
・シンガポール人の海外渡航、および外国人のシンガポールへの出入国についても、万全の予防措置と保護手段を講じた上で、慎重に再開していく。
・世界的な状況は不安定なままであるため、国境の再開については、上記の3段階とは別に検討し実施していく予定である。
・例えば、シンガポールは現在、感染のリスクがシンガポールと同等かシンガポール以下と評価されている数カ国との間で、限られた人数に限って試験的に国境を再開する可能性を模索している。世界的な状況が改善するにつれて、こうした取決めを徐々に拡大することを検討していく。
【国としての感染拡大対策】
・上記を可能にするため、以下の対策に引き続き注力する。
・検査体制の拡充:検査体制の拡充および監視体制の強化。 2020年5月17日時点で、新型コロナウイルスのテストは29万回以上、シンガポールの10万人あたり約5,100回実施されている(約22,000人の居住者と在宅ケア施設のスタッフのテスト、外国人労働者寮の約82,000人の移民労働者のテストが含まれる)。さらに直近では幼稚園に対する検査を開始し、これまでに約8,500人の幼稚園関連スタッフの検査が実施された
・連絡先の追跡:追跡を高速化して、感染者と接触した人の特定および隔離を迅速に行うことで、クラスターの拡大を防いでいく。
・医療キャパシティの確保:患者の急増にも対処できるような十分な医療キャパシティの確保を行う。MOHは、新型コロナウイルスの診断が下りてから退院するまで、シンガポール人と、移民労働者を含む全居住者が必要な医療を受けられるように徹底する。
【企業へのメッセージ】
・雇用主は、安全管理対策(Safe Management Measures)運営体制を導入することで従業員の安全を確保し、且つITの活用等も積極的に実施することで、今後も続くであろう先行きの不透明性に対するビジネスの回復力を強化する必要がある。
主な対策としては、在宅勤務、出勤時間をずらす、シフト制またはチーム制勤務体制の確立、Safe Distancing、オフィスで多くの人が触れる部分や機器の定期的な消毒、洗浄剤と消毒剤の提供、および物理的な会議の回避(ビジネスに限らず)。
・また、従業員の健康状態のモニターと、感染者発生の場合の避難計画およびフォローアップ計画も必要。この体制構築のために、”Safe Management Officer” = 安全管理責任者を任命する必要がある。
https://www.mom.gov.sg/covid-19/requirements-for-safe-management-measures
MOMのガイドに加え、各業種団体が発表する固有の規定も併せて遵守のこと。
・職場での食事や休憩時間に、グループで集まることも含め、長期的で密接な接触を控えるよう従業員に勧告し、複数の従業員や顧客を一か所に集めるようなイベントの計画は不可。
・従業員は、職場内外でこれらの安全管理対策(Safe Management Measures)を遵守する。
▼詳しくはコチラ