本日8月27日、MOMは、現在の雇用状況の悪化と経済の不透明な見通しを考慮して、EPとSパスの発給条件の大幅な見直しを発表しました。
【変更概要】
◆EPの最低給与引き上げ
2020年9月1日以降、新規申請者全員の最低給与を4,500ドルに引き上げ。金融セクターについては、2020年12月1日以降、更に5,000ドルまで引き上げる
◆Sパスの最低給与引き上げ
2020 年 10 月 1 日以降、新規申請者全員の最低給与を2,500ドルに引き上げ。
◆Jobsbank広告をSパス申請時にも義務化
2020年10月1日以降、FCFの求人広告の掲載要件をSパスにも適用する
◆Jobsbank広告期間を延長
2020 年 10 月 1 日以降、FCF求人広告の最低期間を14日から28日に延長する
◆FCFウォッチリスト運営を強化
シンガポール・コアが弱いとみなされる企業や、EPやSパスの従業員が単一の国籍に過度に集中している企業については、ウォッチリストの前段階の企業として新たにグループ化し、雇用慣行の見直しを働きかけていく
▼全文はこちら
https://www.mom.gov.sg/newsroom/press-releases/2020/0827-tightening-of-work-pass-requirements
▼以下、日本語概訳
【前段】
雇用市場の弱さと不透明な成長見通しを考慮して、MOMはEPとSパスの基準を現行の状況に合わせて修正する。
これらの変更は、先に発表された雇用支援スキームの延長と雇用成長インセンティブの導入を補完するものである。
政府は、ローカル人材の雇用を維持・拡大する立場にある企業に強力な支援パッケージを提供するとともに、ローカル求職者が良質の仕事を確保できるように支援するための包括的な措置を講じている。
【EP】
◆EPの最低給与引き上げ
・定期的な給与基準の改定により、EP保有者の伸びは大幅に鈍化しており、過去10年の前半の平均年間13,000人から後半には年間3,000人以下になっている。
・2020年5月1日から、EPの最低給与は3,900ドルに引き上げられたが、2020年9月1日からは、新規申請者全員の給与要件を更に引き上げ、最低給与を4,500ドルとする。
・資格給は経験と年齢に基づいてさらに引き上げられ、40代の高齢で経験豊富なEP応募者については若年層の最低給与の約2倍の給与水準となる。
・更新申請者については、これらの新しい給与基準は2021年5月1日から施行される。
◆金融サービス業に特化した更なる引き上げ
・金融セクターについて、より高い最低給与を設定する。金融サービス業は、他の業種と比較して一貫して高い給与水準で推移しており、且つ引き続き雇用を行っているため、優れたスキルを持つローカル求職者から強い関心を集めている。
・金融サービス業の最低給与について、2020年9月1日からは他セクターと同様4,500ドルとなるが、2020年12月1日以降、最低給与を5,000ドルに引き上げる。
・高年齢で経験豊富なEP候補者の最低給与は更に引き上げの対象となる。40代の候補者は、若い候補者の約2倍の最低給与を満たす必要がある。
・更新申請者については、これらの新しい給与基準が2021年5月1日から施行される。
・これらの変更は、金融機関が優秀なローカル人材の雇用ルートを開発することを奨励し、支援するMASの取り組みを補完するものである。
【Sパス】
◆Sパスの給与条件も引き上げ、LevyやQuotaは変更なし
・近年、S パスの枠組みを定期的に更新してきたことで、S パス保持者の増加は鈍化し、過去 10 年の前半には年間平均 17,500 人だったのが、後半には年間 6,000 人以下にまで減少した。
・S パスの最低給与は、2019 年 1 月 1 日から2,300 ドルに、2020 年 1 月 1 日から2,400 ドルに引き上げられた。
・2020 年 10 月 1 日以降、Sパスの最低給与を更に100ドル引き上げ、2,500ドルとする。
・2021 年 5 月 1 日以降の更新申請者にも適用される。
・今回の調整では、LevyやQuotaには変更なし。以前発表された、サービス、建設、海洋造船所、プロセス部門の S パスの(サブ-DRC)の引き下げは、計画通りに進められる。
◆EPおよびSパス申請時の追加考慮事項
・シンガポール政府は、シンガポールでのビジネスの成長、プレゼンスの拡大、そしてシンガポールの人々のために良い雇用を創出するために、企業を歓迎し続ける。
・EPやSパス保持者を追加することで、現地のPMETの従業員を増強する必要がある雇用主は、シンガポール人の中核となる強力な人材を育成し、維持するために継続的に努力する必要がある。
・したがって、EPやSパスの審査の際は、雇用主が
(i)現地のPMETの雇用支援を継続しているかどうか
(ii)より多くのシンガポール人PMETの採用と訓練を支援するための政府の取り組みに対応しているかどうか
を考慮する。
・また、雇用主がシンガポール人の有資格者を差別していないかどうかも考慮する。不透明な経済状況を鑑み、すべての雇用主がシンガポール人の労働力を増強するために自分たちの役割を果たすことを再認識し、ビジネスに優しいワークパス政策への国民の支持を維持するために、今、これらの考慮事項をさらに強調してる。
【Fair Consideration Framework】
・雇用主は、年齢、性別、民族に関係なく、公平な雇用を真剣に考え、ローカル求職者に十分な配慮をすることが期待されている。
・特に、外国人の応募者に有利になるようなローカル求職者への差別は容認できない。いかなる形であれ、差別的な雇用を行った雇用主は、就労ビザの特権が削減され、起訴される可能性もある。
・雇用主は、EP申請書を提出する前に、すべての候補者を公平に検討しなければならない。
・FCFは、雇用主がまずMyCareersFuture.sg(MCF)に求人広告を掲載し、ローカルの求職者に求人情報を周知させることを義務づけている。また、雇用主は公平な選考プロセスを行い、他の候補者よりもEP候補者を選んだ理由を適切に文書化しなければならない。MOMは、外国人候補者を事前に選考したり、ローカルの優秀な候補者を無視したりするような悪質な行為を行った雇用主を定期的に非難してきたが、今後も続ける。今年だけでも90社の雇用主がFCF違反を理由に就労ビザの発給を停止されている。
◆FCF求人広告の条件をSパスにも適用
・2020年10月1日以降、FCFの求人広告の掲載要件をSパスにも適用する。これにより、ローカル求職者に中途採用の求人情報の認知度を高めるとともに、事業主にもローカル求職者への配慮をより一層求める。
◆EP・Sパスの最低求人広告期間を28日に延長
・2020 年 10 月 1 日以降、ローカル求職者が求人情報に対応する時間を増やし、事業主が真剣に応募を評価できるようにするために、FCF求人広告の最低期間を14日から28日に延長する。
◆EP・Sパス従業員の集中を回避
・FCFの要件を満たすだけでなく、PMETの人数構成からローカル従業員に対する不公平な雇用が疑われる場合は、ウォッチリストに登録される。
・2016年以降、1,200社以上の雇用主がFCFの下で精査されており、全部で3,200件のEP申請がMOMによって却下・保留されたり、雇用主によって取り下げられたりしている。
同期間に、FCFウォッチリストに登録されている雇用主は、4,800人以上のシンガポール人PMETを雇用している。
・今後、シンガポール・コアが弱いとみなされる企業や、EPやSパスの従業員が単一の国籍に過度に集中している企業については、ウォッチリストの前段階の企業として新たにグループ化し、雇用慣行の見直しを働きかけていく。
【結論】
・シンガポールは、国際的なビジネスのためのオープンでつながりのあるハブであり続ける。
・政府は、企業が成長し、シンガポールでのプレゼンスを拡大し、シンガポールの人々のために良い雇用機会を創出することを奨励している。シンガポールが世界中の投資家にとって魅力的な国であり続けるために、ローカル人材を補完する外国人労働力の貢献を評価している。
・今回の EP および S パス基準の更新は、これらの基準を常に最新の状態に保つことを目的としている。私たちは、多様な外国人労働力によって補完されたシンガポール・コアの成長と強化のために、企業を強力にサポートしていきたいと考えている。