MOM長官、FCFウォッチリストの拡大や整理解雇を行った場合のEPへの影響に言及

MOM長官は2020年9月1日、先日発表されたEPとSパスの発給条件厳格化について、スピーチを行いました。 

  

  

▼全文はこちら 
https://www.mom.gov.sg/newsroom/speeches/2020/0901-speech-by-minister-for-manpower-mrs-josephine-teo-at-the-debate-on-president-address 

  

  

以下に概要を抜粋致します。 

  

  

◆前提 

  

・現在では、10人に6人近くのローカル人材がPMETの仕事に就いており、コロナ禍でEPとSパス保持者の数は今年1月から7月までの間に、22,000人減と激減した。 
数字は良い方向に向かっているものの、特に40代、50代のPMETを中心に先行きの不安は募っている。 

  

  

◆解雇 

  

・MOMは積極的に整理解雇を監視し、特に下記10の観点を注視している。 

  

①雇用主は再雇用を検討する前に、コスト削減のための措置など、他の代替案を実施したか? 
②解雇に着手する前に、スタッフの再スキルアップや再配置のための努力がなされていたか? 
③経営状況から見て人員削減はやむを得ないか? 
④雇用主は、整理解雇する労働者を特定するための明確な基準を設けていたか? 
⑤これらの基準には、年齢、性別、民族、家庭環境に基づく差別が含まれていないか? 
⑥会社は財務状況に見合った解雇手当を支給していたか? 
⑦組合制の会社では、選考基準と解雇手当は組合と話し合い、合意したか? 
⑧会社は労働者の転職を支援するための措置を講じたか(例:WSGやe2iに就労支援を依頼する)? 
⑨会社は、影響を受ける従業員に対して、明確かつセンシティブに、適切な通知をした上で、経営状況や計画を伝えたか? 
⑩整理解雇の結果、同社のシンガポール・コアは弱体化したか? 

  

・また、積極的に解雇を監視するだけでなく、ローカル求職者の公平な待遇を確保するための努力を強化していく。 
・MOMは、EPとSパスの申請を審査する際に、同企業の採用活動において、ローカルPMETへの積極的な(「公平」にとどまらずより積極的な)採用を検討しているかどうかをさらに重視する。 
とりわけ、解雇の実績は確実にEP,Sパス申請への影響を与えることになる。 
例えば、EPやSパスの申請者が、最近解雇されたばかりのローカル従業員の代替要員であった場合、よほどの理由がない限り、MOMはその理由を詳しく深堀りし、申請を却下する。 

  

  

◆Fair Consideration Frameworkの精神の徹底 

  

・解雇とは逆に、雇用主がローカルPMET候補者に対して差別的な採用を行っていないかも注視する。 
・ローカル求職者の方が優れているのにも関わらず、優秀とは思えない外国人候補者の方を選ぶという行為は容認できず、 
外国人と同等かそれ以上にふさわしいローカルの候補者がいるのであれば、その候補者を優先的に考慮するのが当然であると考えている。 

  

・また、雇用主が、ローカルPMETの採用・育成に向けた政府機関の取り組みに対応しているかどうかにも重点を置く。 
つまり、採用活動の際、ローカル候補者が必ずしも全ての条件を満たしていなくても、政府の支援を受けて育成できる場合は検討してほしい。 

  

・今年だけでも90の雇用主が、Fair Consideration Framework(FCF)の違反を理由に就労ビザ発給権限を停止されている。 
・ある医療関連の多国籍企業の例では、調査の結果、26人のローカル候補者がMyCareersFuture.gov.sgの求人に応募し、うち7人は要件を満たしていたものの、最終選考や面接は行われなかった。 
2人の候補者は「over-qualified」と判断され、他の候補者は、そもそも求人広告に記載されていない要件を理由に不採用となった。 
この会社は明らかにローカル候補者を真剣に検討しておらず、12ヶ月間のEP保有者申請・更新の停止となった。 

  

・上記は新しい話ではないが、雇用主に、雇用慣行と人事管理を強化する必要性を再認識してもらう必要性がある。 

  

 
◆FCFウォッチリストの運用 

  

・FCFウォッチリストには、2016年以降、1,200社以上の雇用主が登録された。(過去5年間でEPを一度でも申請したことのある企業数は約75,000社) 
リスト入り企業は、業界の同業他社と比較した場合にPMETの従業員の外国人への依存度が異常に高く、改善が行われるまで、MOMはこうした企業の就労ビザ申請は却下か保留を行っている。 

  

・TAFEPはウォッチリスト入り企業に対して、雇用慣行の強化を支援するために働きかけている。 
例えば、ある企業では、言語や文化的嗜好の強い特定の国の富裕層のクライアントを扱っていたが、TAFEPの助言により、クライアントとは関係のない役割はローカル従業員が担うことに合意した。 

  

別のケースでは、単にローカルの人材紹介チャネルに慣れていなかったため、むしろ政府の支援を歓迎した。 

  

また、ローカル人材に対して採用を拡大するという事について、海外本社に上申が必要であったケースでは、上申プロセスにTAFEPが介入することで本社の承認を得ることができた。 

  

・データによるウォッチリスト企業の抽出及びTAFEPを中心とした現在の方法は、多大な人的リソースと手間を必要とするが、企業に人事慣行を再構築してもらうために効果的な方法だと考えている。 

  

  

◆FCFウォッチリストの拡大 

  

・このため、MOMでは、上記のようなウォッチリスト的アプローチをとる企業の数を増やし、以下の特徴のある企業に対しては、積極的な介入を通じて労働力プロファイルの再構築を支援していく。 

  

– シンガポールのコアが弱体化している企業 

または 
– EP と S パスの労働力が単一の外国籍の供給源に過度に集中している企業 

  

・MOMには、求職活動をしていて見放されたと感じたことや、解雇で不当な扱いを受けたといったシンガポール人からの声や、FCF の規則が無視されていたという意見が多く寄せられる 

  

・整理解雇や採用の決定が公平に行われたかどうかを確認するために、関係者へのインタビューや関連する記録ややりとりを調査し、徹底的に調査を行う。 
・例えば、あるITコンサルタント会社が、社内のEP保持者の推薦で、友人である別のEP保持者を採用したという内部告発があった。 
友人を求人に推薦すること自体に問題はないものの、その際に雇用主がローカル候補者を全く考慮せず、GMの直決裁によって採用を決定したことが問題となり 
ペナルティーとして、18ヶ月間の就労ビザ発給・更新停止となった。 

  

・しかし、いくらルールを作っても、企業側が必要性を理解しようとせず隠蔽に走れば、いつまで経っても本質的な改善とは言えない。 
各企業においては、FCFの精神を理解し、採用や解雇の際に、ローカル人材に公平に対応してほしい。 

  

  

◆QuotaやLevyによる制限 

  

・EPの数を規制するためにQuotaやLevyを利用せよという声もあるが、 
EPについては、給与条件を上げることで人材の質の面でハードルを上げ、低給与の人材をQuotaのあるSパスに押し下げることでコントロールする方が賢明である。 
企業がレベルの高い外国人を雇用することで、それがひいてはローカル人材の能力向上につながっていくという仕組みの方がはるかに良いと考えている。 

  

・給与を偽って申告するような雇用主に対しては厳正に対処を続ける。過去5年間で1,200件以上の虚偽申告やキックバックの事例に対処し、起訴により388件近くの有罪判決が出ている。 

  

  

◆ローカル人材雇用の後方支援策 

  

①ローカル人材を雇用する企業に対する政府からの追加支援 
・雇用支援スキーム(JSS) 
2021年3月まで延長 

  

・雇用成長インセンティブ(JGI) 
雇用者が人手不足を解消し、ローカル人材の雇用を拡大するために、10 億ドルの予算を確保したシンガポール最大の奨励金。 
今後6ヶ月間、ローカル人員数を増やした企業はすべて、追加の支援を受けることができる。 

  

②従業員・求職者のスキルの再訓練プログラムへの支援、 
・プロフェッショナル・コンバージョン・プログラム 
40歳以上の中途採用の求職者を再スキル化して雇用するための手厚いトレーニングと給与支援を雇用主に提供するもの。 

  

③また、MAS のような機関は、シンガポール人の上級職への登用を支援し、企業に奨励するための計画を引き続き進めていく 
担当大臣より今後発表がある。 

フェア・エンプロイメント導入ガイド 

2020年1月から、不公平な雇用プロセスに対して、禁固刑・罰金刑という明確な罰則規定が設けられました。本アイテムは、シンガポール政府の求める「フェア・エンプロイメント」の中核をなす「Tripartite Guidelines on Fair Employment Practices」の日英完全対訳と導入にあたっての手引きの2つがセットとなったパッケージです。