弊社では年末年始につきまして下記のとおり休業いたします。 休業日:2023年12月30日(土)~2024年1月4日(木) ※1月5日(金)より通常通りに営業を再開いたします。

シンガポール就労ビザの発給条件厳格化- 2022年9月より施行

2月18日のシンガポール2022年度予算案、および3月4日のCommittee of SupplyにてMOMは、外国人のシンガポールでの就労に関して以下を発表しました。

 

 

シンガポール2022年度予算案の原文はこちらから

 

MOM Committee of Supply 2022の内容はこちらから

 

 

 

■就労ビザの最低適格給与引き上げ

 

EP(Employment Pass: 管理職・経営層・専門職の外国人向け就労ビザ)とS パス(中技能の外国人労働者向け就労ビザ)の最低適格給与の引き上げが発表されました。

 

長らく月額SGD 3,600 (約29万円)だったEPの最低適格給与は、2020年5月、2020年9月と段階的に引き上げられてきましたが、2022年9月1日以降さらに4万円ほど引き上げられ、月額SGD 5,000 (約40万円)となる事が今回発表されました。この2年半ほどで、10万円以上のアップとなっています。

 

また、これらはあくまで有名4大卒の新卒の最低適格給与であり、年齢や職歴が上がれば上がるほどEP申請に必要な最低給は上がっていきます。現在、最低給の最高値は40代中盤以降の候補者に適用される月額SGD 8,400(約68万円)ですが、今回の発表で、2022年9月1日以降はSGD 10,500 (約84万円)まで上げられることが発表されました。さらに、一般的に給与水準が高いとされている金融機関については、最低給がSGD 500 ~ 1,000(約4万円~8万円)ほど追加で上乗せとなります。

 

Sパスについても2022年9月~2025年9月まで、段階的に最低適格給与の引き上げが行われることが発表されました。まず、2022年9月1日からは、現在の最低適格給与である月額SGD2,500(約20万円)に対してSGD500上乗せのSGD 3,000(約24万円)が最低給与となります。2025年にはSGD 3,800(約30万円)になる事が示唆されており、これは実は、2020年5月までのEPの最低給与よりも高い水準となります。

 

 

■新評価フレームワークCOMPASS」の導入(EP申請のみ)

 

これまでは、上記に記載した最低適格給与さえ満たせばEPの申請が提出でき、そこから先はMOMの個別審査によりEP発給の可否が決まるという仕組みでした。しかし今回、外国人候補者の「補完性」を事前に測るために、新しい評価フレームワーク「COMPASS」が、2023年9月より導入されることが発表されました。

COMPASSでは、個々の就労ビザ申請を以下4つの基準に基づいてスコア付けし、スコアが政府基準に満たなければそもそもEP申請が出せないとされています。4つの基準は以下の通りです。

 

  1. ①同業界同年代の平均給与との比較:トップ10%には20点、トップ35%には10点、それ以下は0点
  2. ②最終学歴:世界トップレベルの大学卒には20点、大卒以上には10点、それ以下は0点
  3. ③会社の全従業員に占める、就労ビザ申請者と同じ国籍保持者の割合:5%未満には20点、5%~25%には10点、25%以上には0点
  4. ④会社の全従業員に占めるローカル従業員割合の高さ(同業種内で何位か):上位50%以内には20点、50~80%には10点、下位20%未満には0点
  5.  
  6. ※なお、1と3については現場作業員レベルの人材は計算に含まれず、月給SGD3,000 (24万円)以上の専門人材・マネージャー人材以上を計算に入れる
  7. ※25名未満の組織については、3と4は自動的に10点が加算される

 

 

上記からわかるように、本フレームワークは、EP申請者個人には「より高学歴で給与が高い人材」を、EP申請企業には「よりシンガポール人割合が高く、外国人の国籍はダイバーシティに富んでいる」状態を明確に求めるものとなっています。企業がEPの申請を出すには、合計で40点が必要となり、1~4すべてで10点ずつ獲得しても良いし、どれかの要件で20点を獲得し、その代わり他の要件で0点という事も許容されています。

また、

・AI開発者やサイバーセキュリティの専門家など、シンガポール国内の労働力が明らかに不足しているポジション

・政府とのパートナーシップのもと、シンガポールの戦略的経済優先事項に沿って、イノベーション、ハブ、国際化などの活動を積極的に行っている企業

に対しては、追加のボーナスポイント10点がそれぞれ与えられるとも発表されました。

 

また、③と④で点数が恒常的に低い企業に対しては、今後積極的に「ウォッチリスト」に入れ、ローカル従業員の比率・ローカル従業員のポジションの向上に向けて、政府担当者がその採用基準の設定や見直しに大きく介入することも明言されています。(「ウォッチリスト」入りしている間は、事実上EPやSパスの発給は不可)

 

 

詳細は今後徐々に発表されていくようですが、いずれにしても大きな制度変更となる事となります。

 

 

■外国人人材の「補完性」の定義

ここまで説明してきた就労ビザの最低適格給与の引き上げとCOMPASSフレームワークの導入を通じて、MOMは、下記を達成することを狙うとしています。

・EP:ローカルの専門職・マネージャー層人材の上位3分の1に匹敵する人材のみを受け入れる

・Sパス:ローカルの技術者・アソシエイト層人材の上位3分の1に匹敵する人材のみを受け入れる

 

 

■グローバル企業の国際ローテーション制度への配慮

昨今の就労ビザの厳格化で、グローバル企業が若手トレーニングの一環として行うシンガポールへの若手社員の配置が厳しくなっている事は、以前より外資系企業の中では深刻な問題とされてきました。COMPASSの導入によって、状況はさらに厳しいものになる事は確実です。そこに対しては、「グローバル・ローテーション制度」の導入により、国際ローテーション制度を持つグローバル企業が、海外からポテンシャルの高い若手をシンガポールに受け入れることができるようになると発表されました。ただし、その見返りとして、そうした企業は同じローテーション制度に参加しているシンガポール人従業員を海外に派遣しなければならないとも発表されており、詳細は未発表なものの注目が集まるところです。

 

 

■「公平な雇用慣行」の法律化

シンガポール政府の定めた「公平な雇用慣行に関するガイドライン」はこれまで、あくまで法律を補完するガイドラインという立ち位置でしたが、近いうちに法律化されることが今回改めて発表されました。これについても未だ詳細は発表されていませんが、より厳しい罰則を設ける事で、企業が外国人の採用・配置を検討する前に一歩立ち止まることを促し、従来外国人で占められてきたポストのローカル人材への置き換えを狙うものであると思われます。