シンガポールにおける「公平な雇用」とは?Part 1:公平な採用方針の策定

シンガポールでは従来より、「Fair Employment Practices(公平な雇用慣行)」というスローガンのもとで、年齢や国籍、性別といった要素によって人材採用上の有利不利が生じず、純粋に能力に基づいた採用慣行が各企業で徹底されるように、様々な施策やルールを打ち出してきました。特に、雇用予定の外国人(駐在員)と同等かそれ以上に能力のあるシンガポール人がマーケットに見つかれば、シンガポール人の方を優先的に雇用しなければならないというポリシーは、政府運営の求人ポータルサイトMyCareersFutureへの求人広告投稿義務によって非常に厳格に運用され、多くの外資系企業にとって必ず遵守すべきプロセスになっています。

 

こうしたルールの運用部分を担っているのが、MOM(Ministry of Manpower)の下部機関のTAFEPです。

今回は、2022年6月にTAFEPから発行された「What Makes Fair Hiring?」(公平な雇用とは?)という記事の和訳をお届けします。

 

TAFEP原文

https://www.tal.sg/tafep/resources/articles/2022/what-makes-fair-hiring-part-1-establishing-a-fair-hiring-policy

 

 

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公平な雇用とは?Part 1:公平な採用方針の策定

組織の中で公平な採用方針を確立するためのキーポイントとは何でしょうか?

2022年6月22日

 

 

職場における公平さは、従業員の仕事への取り組みとモチベーションに影響を与えます。公平さの原則は、従業員の仕事のすべての面、つまり採用の過程から適用されるべきです。

まずは、公平な採用方針を策定することから始めましょう。

 

公平な採用方針の策定

採用方針とは、採用に関する組織の基本的なアプローチとその要件を定め、採用プロセスのすべての段階において公平さと一貫性を保つためのものです。これを策定することによって、公平な雇用主であろうとする姿勢を裏付けることができます。以下は、そのための手順です。



すべての関係者のプロセスへの関与

採用基準の構築には、採用プロセスに関わるすべての関係者が関与していることが重要です。

例:

・シニアマネジメント

・採用責任者であるラインマネージャー

・人事部

 

採用方針と全体的なガイドラインの目的を明確にすること

公平な採用に関する企業の優れた方針はその趣旨と目的を明確にすることから始まります。

例:

・能力主義に基づく人材採用の重要性

・採用プロセスに反映させるべき企業の価値観と、公平な雇用主として一般的に認識されるためにそれがなぜ重要なのか

・公平な採用方針から期待される成果:従業員や志望者に公平な機会を与えること、能力に応じた採用とすべての従業員や応募者を尊重し公平な環境を与えること、など

 

 

採用・選考プロセスのキーポイントの詳細

プランニング

・採用の承認プロセスはどのようになっていますか?マネージャーはどのように人員配置の要望を伝えますか?

・業界の雇用規制はありますか?

・現在のプロセスは、特定のグループ(例:障害者、育休明けの女性、高齢者)に対して意図せず障壁となっていませんか?

・例外的なケースにおいて、組織としてできる調整や配慮はありますか?

 

求人広告

・求人広告を掲載する前に、差別的な内容を広告から排除する保護措置が取られていますか?

・広告掲載に際して、適切な承認プロセスがありますか?

 

候補者の選定

これには、面接前の志望者のスクリーニングやレジュメのスクリーニングが含まれます。

・職種によっては、プレ選考テストや複数回の面接などが必要な場合がありますか? その場合、これらは公平に実施されていますか?

・選考基準はどのように設定されていますか?

・その選考基準は、求人広告にも記載されていますか?

 

面接

・面接官は公平な面接をする準備ができていますか?例えば、TGFEPや無意識的な偏見、面接・選考方法等に関する研修を受けていますか?

・面接官は面接の際、相手に配慮しまた誠実に応対することができますか?

 

レファレンスチェック(経歴の照会)

・レファレンスチェックを行っていますか?

・レファレンスチェックは基本的な要件かそれとも特定の職種・条件の場合のみに必要ですか?

 

採用通知

・雇用法に則った条件の提示となっていますか?

・給与の提示や雇用条件は、公平性を確保するための枠組みに基づいていますか?

・内定者が雇用条件を確認し、検討するための十分な時間が提供されていますか?"

 

 

公平な指針を早期に確立し、実施することで、適切な言動の一貫性を保ち、採用の質と効果を向上させることができます。そして何より、採用を成功させまた採用目標が達成されるよう、会社や組織を導くことができます。

 

この記事は、採用活動の見直しを促進し、公平な採用活動への組織の取り組みを確立するためのシリーズの一つです。