本記事は、シンガポール予算2020の日本語解説セミナーの動画データを書き起こした物です。
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【シンガポール予算】Part 2-3 就労ビザ
日米公認会計士 山下 英男
シンガポール予算2020の最後の部分として、ビザ及び人材開発について解説をしていきたいと思います。まず、ビザ及び人材開発の部分で、昨年シンガポール予算2019において、サービス産業に対するSパスの厳格化が発表されました。昨今、外国人の受け入れを規制し、ローカルの従業員に対する雇用機会を与えよう、とのことから、かなり、エンプロイメントパスの申請、承認、そしてSパスに関する枠組み、こちらが厳格化傾向にあることは皆さまもご承知の通りかと思います。
そういった中で、今回シンガポール予算2020の中で発表された新たな政策として、追加のSパス厳格化について公表されました。この内容を見ていきますと、まず、建設、製造、海運、プロセス業のSパス保持者というのは、過去2年で3.8%ずつ増加しております。そして政府が見込んでいるのは、今後ウィルスの影響が落ち着き、貿易摩擦が解消されてきた時に、経済が回復傾向になった時、この時に、今後これらの業者でSパスがさらに増加する見込みである、といったことを見通しで発表しております。
その中で、Sパスに関する具体的な政策として、厳格化がされております。“SパスSub-DRC”、これはローカルが何人いる、ワークパミットが何人いる、その内Sパスが何%までだせるかというところの数字でございますが、このSパスSub-DRCを建設、海運、プロセスについて厳格化しております。
プロセスというのは、例えば製油所ですとか、石油化学品の工場、もしくは特殊化学品の工場等がこのプロセス産業に該当します。どれぐらい厳しくなるかというと、現在このSub-DRCというのが、建設、海運、プロセス業については、20%となっております。もう少し詳しく解説しますと、ローカルが1名雇用している場合に、建設とプロセス業については、ワークパミットが7名まで出せます。そしてこのローカルとワークパミットホルダーとSパスを合わせたトータルの会社の従業員、これの内20%の割合まではSパスが出せます。
一方、海運業については、ローカルを1名雇うと、ワークパミットが3名まで出せます。そして、これにローカル、ワークパミットホルダー、Sパスホルダーこれを加えたものを分母として、これのうちの20%までが海運業については、Sパスの発給が可能です。
この20%という部分が2021年1月いっぴから18%に引き下げがされます。そして、2023年1月いっぴからは、さらなる引き下げとして15%まで引き下げが行われています。こちらについては、かなり計算式が複雑になっておりますので、政府が自動計算ツールというものを公開しています。是非、インターネットで、“MOM Calculate Foreign Worker Quota”と検索していただいて、チェックをしていただけますと幸いです。
そして、増加するSパスの中に、製造業についても言及をされておりましたが、今回のSパスSub-DRCの引き下げについて、製造業は対象外となっております。但し、政府側の発表では、もし経済的な状況が許すのであれば、すぐにでも、製造業についてもSub-DRCを厳格化したいという風な発表がなされております。なので、今後は製造業についても同様の取り扱いが発表されるものだと予想しております。
また、Sパスホルダーを雇用している場合は、税金としてLevyが発生しますが、こちらについては変更はありません。ここまでの部分が今回のビザに関するシンガポール予算2020の最も注目すべきSパスの厳格化の部分になります。
その他に、人材開発の部分として、あまり日系企業には関係ないかもしれないですけれども、“Asia Ready Exposure Programme”というのと、“Global Ready Talent Program”というものが、新たに言及されております。こちら、日系企業には関係しないんですけれども、今後シンガポールのグローバルタレントとなるような人材をASEAN、中国、インドへ留学したり、その部分のインターンの補助するというような発表がされておりますので、シンガポールとして今後どのエリア、どの地域に人材を注力していくのか、どの地域のスペシャリストを育成していくのかといったところで、この部分というのが少し参考になるかもしれません。
ビザの方の後半の部分に行きまして、これも非常に大事な部分になっております。この部分は、Covid19コロナウィルスに関するMOMの対応状況をまとめたものになります。ここに板書したもので、全てはシンガポール予算2020の中で言っていないものもあるんですけれども、最近のニュースになっているところも含めて、一つの板書にまとめております。
まず、Covid19のMOMの対応状況としては、中国本土のパスポート保持者、こちらについては新規の就労ビザの発給停止というような取り扱いがMOMから発表されております。そして、次に過去14日間に中国本土に訪問したビザ保持者、こちらについては、事前にMOMに申請が必要となっており、入国許可の取得が必須となっております。そして、シンガポールに入国した後には、14日間の自宅待機となっております。従来は、自宅待機の中でも外出ができるような取り扱いになっていたんですけれども、今は、一切の外出は禁止という風になっております。
そしてこの発表がなされた後に、さっそく違反のケースとして大きくニュースになったものがございます。企業で、EPを取得して働いている人間が中国に行って戻ってきたときに、この対応をしなかったという企業があり、そこにMOMが検査に入りました。そしてその企業から発給されて働いていたEP保持者、該当者については、EPを即時取り消し、そして24時間以内のシンガポールからの強制退去、さらに今後永久的なシンガポールでの就労禁止となっております。
そして、このEPの対象者以外についても、勤務先企業についてもMOMはペナルティを課しました。勤務先企業については、今後2年間の就労ビザの発給一切の禁止というような取り扱いがなされました。
皆様、日系企業様、コンプライアンス意識が高い企業様ばかりだと思いますので、この点は、既にキャッチアップされているかと思いますが、今一度、この部分、何か起こってからでは、取り返しのつかないことになりますので、社内で徹底頂ければと思います。
そして、もう一つの部分で、2020年の1月に“Fair Consideration Framework”こちらが改正されました。改正の2点としては、外国人の新規採用、更新の停止期間が最大2年間に延長されております。そして、EPの申請において、虚偽の申請をした場合には、最大2万シンガポールドルの罰金、プラス、最大2年の禁固刑、刑務所に行くというものになっております。こちらについては、物流会社で、この事例があったことで、一時期シンガポールのニュースを大きくにぎわせましたが、中には日系企業もこういった対応に迫られている声も聞こえてきております。
そしてこの2020年1月から新たに始まったこの罰則規定については、今後かなり多くの企業に広まっていくことが予想されます。そして、まずこの罰則を企業に通達して、その上で、TAFEPと、企業がTAFEPと協力しながら、ローカライゼーションをすすめていく方向に政府が少しずつ舵取りをきってきております。
こういったケースに出くわしたときは、まずは、焦らず、慌てず、政府の支持に従って、誠実に対応していくことが一番と思いますので、この点はご留意を頂けますと幸いです。
そして、最後に、これはもう1年前のことになりますが、2019年4月に雇用法が改正されております。この部分については、弊社側で、シンガポール雇用法2019というので、右側に英語、左側に日本語をつけた和英対訳のシンガポール雇用法本というものを出版しております。
是非ご興味があれば、購入のご検討を頂ければと思います。こちらの今回の動画を視聴されてる皆様については後日Eメールにてこちらの申し込みリンク先をお送りいたしますので、是非ご検討いただければと思います。
ここまでが、今回のシンガポール予算2020の概要になります。駆け足になりましたが、少しでもシンガポールに根を張る日系企業様の力添えになればと思って、今回のウェブセミナーを開催させていただきました。今後こういったビザの部分、そしてその前に説明しました、助成金や税金の部分、そしてこれらを全て含めたビジネスのトランスフォーメーションの部分、こういった部分で、もし皆様の企業で、外部のコンサルティングの力を借りて、プロジェクトを進めたい、こういった要望がありましたら、最初の小さなことでも結構ですので、是非私共にお問合せいただければと思います。
本日はシンガポール予算2020徹底解説最後までお付き合いいただき誠にありがとうございました。