【シンガポール予算2020】Part 1 予算全体概要

本記事は、シンガポール予算2020の日本語解説セミナーの動画データを書き起こした物です。

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【シンガポール予算2020】Part 1 予算全体概要

日米公認会計士 山下 英男

皆様、いつもお世話になっております。グローバルパートナーズコンサルティングGPCの山下です。この動画は2020年2月20日に撮影しておりますが、今現在、アジア地域をはじめとした世界中でコロナウィルス、Covid19が猛威を振るっております。

皆様のご家族やご友人にも被害に遭われた方がいらっしゃるかもしれませんが、そういった方々の一日も早い回復とそして事態の鎮静化をお祈り申し上げます。

さて、2020年2月18日に、シンガポール予算2020が政府、財務省より公表されました。弊社GPCでも「日系企業が必ず知っておくべき予算2020」と題して、集合型のセミナーを予定しておりましたが、昨今の団体イベントの自粛の傾向に倣い、急遽Webセミナーへの開催に変更させていただきました。

Webセミナーを通じて、皆様にこれからシンガポール政府が見込んでいる政策、そして方向性が現地に根を張る日系企業にどのように影響を与えるのか、こちらをしっかりとお伝えできればと考えております。

本日のWebセミナーでございますが、大きく2つのパートに分かれます。一つ目はシンガポールの経済概況とそれを踏まえた政府予算を解説するパート、そして二つ目は、その予算概要から発表された具体的な政策を解説するパート、この二つに分かれます。

それでは、さっそく本題に入ってまいりたいと思います。まず一つ目のパートとして、政府予算概要を解説していければと思いますが、はじめにシンガポールに来て間もない方で、この動画を視聴されている方もいらっしゃるかもしれませんので、シンガポール予算というものがどのようなものかを解説したいと思います。

日本においても同様に政府予算というものが毎年発表されておりますが、日本の政府予算との大きな違いは、シンガポールには地方政府というものがない。こういった点が大きな違いとして挙げられます。このため、シンガポール政府の予算は、一つの企業のIRのようにとても透明性が高いプロセスの中で行われ、そして、そこから公表される政策、方向性についても、国民そしてシンガポールに住む全ての人々に、ダイレクトに直結するものになっております。

それでは、まずはじめにシンガポール予算の策定プロセスについて見ていきたいと思います。2月18日にシンガポール財務大臣ヘン・スイ氏より予算案が国会に提出されました。そして、ここから3月31日の予算法成立を目標として、予算委員会での審議、そしてその後、国会が予算案を可決、最終的に大統領の同意を得たうえで、法律として成立します。

この予算委員会というのは、Committee of Supplyと言われますが、シンガポール予算2020の発表を受けて、その後各省庁に振り分けられた予算を基に各省庁が内部で議論をして、最終的に各省庁のホームページでより具体的な政策が発表されます。

シンガポール政府、多くの省庁がありますが、日系企業が必ずチェックすべき省庁のCommittee of Supplyというものをここに列挙させていただきました。

一つは税務署IRASそして企業会計庁ACRAを傘下に持つMinistry of Finance財務省のCommittee of Supply、そして次に外国人の就労ビザを管理するMOM、そして次に経済産業省的な位置づけのMinistry of Trade and IndustryのCommittee of Supply。ここは傘下にEDB, Enterprise Singaporeを持っており、政府からでる助成金や補助金のほとんどはここで管理されています。そして傘下に金融庁MASを持つPrime Minister’s Office。この4つのCommittee of Supplyは、必ずチェックされた方がよろしいかと思います。

大体Committee of Supplyは、3月の初旬から中旬に、各省庁のホームページで公表されます。ここまで予算の策定のプロセスを説明しまして、ここからパート1の本題のところに入っていきたいと思います。

まず、2019年の経済概況、シンガポールの経済概況、こちらを見ていきたいと思います。

まず、2019年の経済ですが、GDPの成長率は0.7%と過去5年で最悪の成長率を記録しました。こちらにGDPの推移と実質の成長率が並んでおりますが、過去5年間では、大体3%から4%の成長だったのに対して、2019年が0.7%となっております。

これは、2008年の金融危機以降最悪の経済成長率となっております。この低い経済成長率の一番の理由というのは、シンガポールは貿易、金融、サービス業が主な産業ですので、米中の貿易摩擦これの影響を一番に受けたというところが、主な要因です。そして、政府の経済見通しの中では、2020年から影響が広まっているCovid19、これによりさらに回復が鈍化するのではないかという風な見通しが発表されております。

それを受けて、実際の経済見通しの数値も下方修正が行われております。従来2020年の経済成長率は、0.5%から2.5%であったのに対して、修正後は、-0.5%から+1.5%に下方修正が行われております。そしてStatistic Singaporeから発表されている足元の産業別経済成長率についてみても、サービスが -3.4%、製造が -0.7%、そして小売・卸売が -3.1%、こういった形で多くのシンガポールのしかる産業の中でもマイナス成長を記録しております。

こういった経済概況の中で、2020年の予算が発表されましたが、かなり難しい状況の中で、予算を発表したのだろうなぁというところで、そういった背景も踏まえながら、2020年の予算の方針から説明していきたいと思います。

まず、2020年の予算の方針、毎年シンガポール政府がスローガンを発表してるんですけれども、今年のテーマ、スローガンとしては、“Advancing as one Singapore”となっております。過去6年間のスローガンを見てみると、2014年から2016年、2017年にかけては、未来志向のスローガンを置くことが多かったんですけれども、昨今では、グローバリゼーションの支持率の低下から、シンガポールとして一つにまとまろうという風なテーマでスローガンを設定しています。

このAdvancing as one Singaporeというテーマがある中で、それに従ったサブテーマというのを政府が同じく決めています。今年のサブテーマは4つありまして、一つ目が企業の雇用の安定化と支援、そして二つ目が経済と企業の転換と成長。そして三つ目が全シンガポール国民のケアと教育、そして最後に未来の創造と保証。この4つになっております。そして、パート2では、このサブテーマに応じた具体的な政策を解説する予定ではございますが、今回のWebセミナーは日系企業が必ず知っておくべきシンガポール予算2020となっております。そのため、シンガポール国民のキャッシュバックのような助成金制度やもしくは都市開発やエコ政策、こういったものは今回のWebセミナーの対象外としております。

今回のセミナーで主に焦点を当てるのは、こちらで活躍する日系企業にダイレクトに関わる政策、こちらを説明していきたいと思います。

それでは、パート2に移る前に、最後に予算概要のところを説明していきたいと思います。最後のこちらの前のスライドで予算のところ、こちら2018年から2019年、ここは実績ですね、2020年の見込みを並べております。こちら10億シンガポールドルで表記しておりますが、少しわかりにくいので、隣に日本円にした場合の金額を書いております。2020年の見込みでは、歳入がシンガポール政府7兆5000億円ある予定です。そして、歳出が予想では、8兆4000億円出ていく予定です。これのNetの金額としては、2020年の見込みでは、マイナス8700億円の赤字になることを見込んでおります。

昨年の2019年に久しぶりにシンガポール政府の予算が赤字となりましたが、これが2020年には最近のウィルスの影響も受けて、さらなるマイナスを記録することが見込まれています。

他に政府の中から、歳入と歳出の細かい内訳も公表されておりますが、昨年もしくは過去5年間と比べた時に、大きく違うところを申し上げますと、まず、健康分野への予算の配分割合、これが大きく増えたことが挙げられます。2019年では14.8%の予算配分割合だったのに対して、2020年では16%まで増加しております。これの大きな理由は、シンガポールドル8.6ビリオン(7700億円)を国民のケアに回す、というところで、2019年では0.65ミリオンであったものに比べると、大きく増加しております。

そしてもう一つが、シンガポールドル0.8ビリオン(約640億円)をウィルス対策に回す、こういったところで、健康分野への予算の配分割合というのが大きく増加している、その結果2020年の歳入・歳出のNet金額は大きくマイナスになる予定であると。こういったところが、今後の1年間でシンガポール政府が予算として見込んでいる数字になります。

ここまでが予算2020の概要になります。そして、こういったコロナウィルスの影響をはじめとしたところで、大きく成長性が下がっているシンガポール、そこから政府がどのような予算を説明しているのか、計画しているのか、公表したのか、こういったところをパート2で解説していきたいと思います。パート1は以上になります。ご清聴ありがとうございました。

【シンガポール予算2020】Part 2-1 助成金

【シンガポール予算2020】Part 2-2 税金

【シンガポール予算2020】Part 2-3 就労ビザ