【シンガポール予算2020】Part 2-1 助成金

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【シンガポール予算2020】Part 2-1 助成金

日米公認会計士 山下 英男

皆さん、いつもお世話になっております。グローバルパートナーズコンサルティングーGPCの山下です。2020年2月18日に、シンガポール予算2020が発表されました。このパート2では、予算概要から発表された、具体的な政策を解説していきたいと思います。

パート1で解説しましたが、シンガポールは2008年の金融危機以降、今までにない低成長をしております。その中で、グローバリゼーションや成長戦略の政策というよりは、どちらかというと国民の雇用や企業の運転資金を守るといった風な政策に重きを置いたシンガポール予算2020となっております。

そして、いくつか成長戦略としての政策を用意していたにも関わらず、Covid19の影響でその対応に予算を割いたのではないかと推測しております。

この具体的な政策の中で、今回は日系企業にダイレクトに関わるものとして、助成金、税金そしてビザ、この3つを解説していきたいと思います。

まず一つ目、助成金のところから解説していきたいと思います。助成金の中で新しい助成金の内容が発表されました。一つ目が“Stabilisation&Support Package“になっております。そして二つ目が”Care Package”、三つ目が“Entreprise Grow Package”、そして最後が“Entreprise Transform Package“。この四つが新たな取り組みとして、政府から政策として発表されました。

まず最初の“Stabilisation&Support Package”から解説していきたいと思うんですが、ここの目的というのは、シンガポールがかつてみないほどの低成長に見舞われてる中で、雇用の確保と企業のキャッシュフローの確保、この安定化支援というところに、重きを置いた政策となっております。そしてこの“Stabilisation&Support Package”は、5つに分かれまして、a)、b)、c)、d)、e)の通りとなっております。

それでは、a)のところから一つずつ見ていきたいと思います。まずa)Job Suppot Package、こちらは企業へ直接政府から助成金が払われるタイプの制度となります。内容についてみていきますと、月給3600ドルまでのローカルを雇用している場合8%までの補助金が政府から企業に支払われるものになります。この補助金の計算対象期間としては、2019年の10月から2019年の12月の3か月分の給与が対象となります。

一つ例示を申し上げたいと思います。例えば、2019年の10月から12月の間に、月給3000ドルのローカル従業員を雇用していた場合、助成金の対象となる金額は3000ドル×3か月の9000ドルになります。そしてこれに、補助金率の8%をかけた720ドル、これが政府から企業へキャッシュバックされます。こちらの助成金を管轄しているのは、税務署IRASになります。そして政府から会社への補助金の支給時期は2020年の7月末までに支給されることが見込まれております。

そして、二つ目のところです。“Enhanced Wage Credit Sheme”、こちらもa)のJob Suppot Packageと同じく、政府から企業へ助成金が払われるタイプのものとなります。従来Wage Credt Schemeというのは、存在していたのですが、これの対象となる範囲を広げたというのが、新しい政策の発表内容となります。まず従来のWage Credit Schemeについて説明させて頂きます。こちらも一定期間シンガポール人を雇用していた場合、企業に助成金が払われるものになりますが、その条件として、従来は月給4000ドルまでのローカルを3か月以上雇用‘していた場合、且つ50ドル以上の昇給があった場合、その昇給額の2019年は15%、2020年は10%がIRASから企業へ支払われるというものでした。

そして、新たに発表された“Enhanced Wage Credit Sheme”では、このローカル従業員の月給が4000ドルだったものが、5000ドルまで引き上げが行われております。

もう一つの変更点としては、助成金の割合が、2019年は従来は15%だったんですけれども、この“Enhanced Wage Credit Shem”では、20%に引き上げがされています。そして2020年の方は、従来は10%だったんですけれども、Enhancedの方では15%に引き上げが行われております。一つ例示を申し上げます。2019年1月いっぴづけで、ローカル従業員の給料を、4000ドルから5000ドルに昇給させました。となると、2019年1月に1000ドルの昇給をさせたので、年間の昇給額全体は12000ドルになります。1000ドル×12か月ですね。2019年の補助金でいうと、この12000ドルに20%をかけた2400 ドルこれが、IRASから企業にキャッシュバックされることになります。

こちらのキャッシュバックは通常3月末。2019年の対象期間にかかる補助金は2020年の3月末、そして2020年の補助金にかかるキャッシュバックは2021年の3月にIRASから企業にそれぞれレターが発行されます。この二つが日系企業でローカル従業員を雇用されてる企業様にとって一番関わってくるところかなという風に考えております。

“Stabilisation&Support Package”の3つ目のところになります。“Capacity of Reskilling Programmes”こちらは、40歳以上のシンガポール人を、指定プログラムを通して雇用すると、最初の6か月の給与の20%が補助されます。こちらは、上限が6000ドルになります。上のa)、b)と違って、c)の特徴としては、a)、b)についてはCPFのレコードを政府が持っていて、社会保険料のレコードですね、これをもとに政府側で自動計算して、企業にレターが発行されます。但し、c)については、企業側から別途政府の方に、申し込みが必要な制度となります。

そして次のd)“Temporary Bridging Loan Programme“になります。こちらは日系企業様にはあまり関係ないかもしれませんが、運転資金がこのシンガポールの経済停滞により、足りなくなってくるローカル企業が、出る可能性があります。その中で、政府が最大シンガポールドル1ミリオン、日本円で約8000万円の資金貸付をします。この利率は最大5%までになっています。

そして次の“Redeployment Programme”にご説明していきます。これが、先ほどから解説しております、“Stabilisation&Support Package”の最後の5つ目となります。こちらは、従業員のスキルアップや、新たな従業員の雇用時に企業に助成金が支給される可能性があるものになります。内容としては、給与の70%を従来は3か月サポートしていたものを、6か月のサポートに変えております。これの注意点としては、対象となる業種が観光、航空、小売、食品サービス業といった、現在のコロナウィルスの影響やシンガポールの経済停滞に一番影響を受ける業種、この業種に対してシンガポール政府が、別途“Redeployment Programme”と称して補助金を用意しているものになります。

ここまでが“Stabilisation&Support Package”になりまして、次にもう一つ政府から発表されたのが、“Care Package”になります。

ここも日本企業にはあまり関係ないかもしれませんが、家族で中には雇用を失ってしまう人が、いるかもしれませんので、そういった方向けに生活費を補助するといったものになります。こちらは企業向けというよりは、個人向けのものになります。

そして、最後の3番と4番のものになります。3年前からシンガポール政府はSME(Small and Medium Entity)の育成にかなり力を入れております。このSmall and Medium Entityは、いくつか定義がありますが、一番重要な定義というのが、シンガポールのローカル資本が30%入っているというところになります。そのローカル資本が30%入っていれば、シンガポール政府から例えば海外展開をするとか、今あるオペレーションを自動化するとか、新しいブランディングの戦略を立てるこういった時に出るコストを最大70%の補助金としてもらえるような制度があります。この部分についても政府が追加で、促進をしていく、または新たな助成金のプログラムを設けるというようなことをしています。一つが“Enterprise Grow Package”というところで、”Go Business Platform“のローンチとなります。これは後日シンガポール政府の方から新たに詳細が発表される予定です。

そして、従来あった“SME Go Digital Programme”これは、中小企業が今までマニュアルの仕事に頼っていたものをデジタル化して、オペレーションを効率化しようという風なものになりますが、こちらについても内容が拡大したり、受け入れる企業が多くなります。

そして、3つ目が“Market Readiness Assistance Grant”ですね、これは、シンガポール企業が別の地域、東南アジアのベトナムとかインドネシアとか別の国に進出していくときに、政府から助成金がもらえるものとなります。これも予算の幅や対象が拡大される予定です。

そして最後に、“Enterprise Transform Package”というのがあります。これも従来は、従来型ビジネスを行っていたシンガポール企業が、次の成長につながる時のトランスフォーメーションをすると、ビジネストランスフォーメーションする時に、政府側が補助金を出したり、もしくは、そこにしっかりとフィットするような人材を派遣したり、そういったサポートをしてくれるものになります。

ここについては、管轄がEnterprise Singaporeもしくは、EDBとなりますので、3月初旬から3月中旬に出されるCommittee of Supplyこの内容をしっかりチェックされることをお勧めします。直接シンガポール資本が30%以上入っていない日系企業には、あまり関わりがないことかもしれませんが、ただ、マーケットの競合相手が、こういった形で政府の支援をもらいながら戦っているというところを知る意味でも、是非確認されることをお勧めします。

ここのところまでが、シンガポール政府予算2020で出された助成金の内容になります。ご清聴ありがとうございました。

【シンガポール予算2020】Part 1 予算全体概要

【シンガポール予算2020】Part 2-2 税金

【シンガポール予算2020】Part 2-3 就労ビザ