シンガポール進出における10のポイントと日系企業進出事例
日米公認会計士 山下 英男
シンガポール政府認定コンサルタント/ 英国 経営学修士(MBA) 泉 美帆
「シンガポールの富裕層に向けたビジネスで進出したい。」シンガポール進出コンサルティングファームとして10年会社経営をしている弊社にはこのようなご相談を進出を予定されている会社から多く頂きます。お問い合わせを頂くのは非常に嬉しいですし、シンガポールには富裕層と呼ばれる人たちが存在するのも事実ですが、新聞やテレビなどでは、マリーナベイサンズのような煌びやかな姿だけが取り上げられてしまっているなぁ、と感じています。
この記事では、私たち進出コンサルタントが日々クライアントとシンガポールの地で知恵を絞り、汗を流した実体験をベースに、シンガポール進出のリアルをお伝えします。
シンガポール進出5つのメリット
シンガポール進出5つのデメリット
シンガポール進出5つのメリット
『シンガポール進出5つのメリット』動画解説版
(1)安定したインフラ、政治、経済
「シンガポールに帰ってくるとホッとする」
海外出張からシンガポールに帰ってくる度に、私たち進出コンサルタントはこの言葉をついつい口にしています。
シンガポールのチャンギ国際空港は、どの調査機関が発信している情報でも常に一位を獲得しています。飛行機を降りてから家に着くまでタクシーに乗れば基本的に1時間もかかりません。ちなみに、私の最短記録は25分です。
MRTと呼ばれる地下鉄電車とバスに乗れば、公共交通機関で国の端から端まで、ほぼどこにでも行けます。
GRABというスーパーアプリを使えば、配車はもちろんのこと、決済、フードデリバリー等、本当に何でも出来てしまいます。最近、GRABがクレジットカードを発行をしたのですが、GRABポイントがガンガンたまるおかげで5回に1回くらいは無料でGRABで移動しています。
政治に関しては様々な見方があるので語りにくい部分もありますが、1965年のマレーシアからの独立以来「人民行動党(People's Action Party)」が与党として君臨し続けています。このような長期政権は、「独裁国家」と各国から非難を浴びやすいものですが、シンガポールに限ってはそのような声をあまり聞いたことがありません。
(そのような国の姿を見せたかったトランプ米大統領は、北朝鮮の最高指導者である金正恩との歴史的な会談をシンガポールで開催したのではないか?という説もあります。)
東京23区と同じ大きさのシンガポールは、面積としては小さな国ですが、一人当たりの名目GDPは6万ドル。軽く日本を凌駕しています。
世界経済のネタ帳より
長くデフレに苦しみ、失われた30年に突入をした日本。混迷を極める日本の政治、経済を横目に、資源と呼ばれる物は人々の頭脳しかなかったはずのシンガポールは過酷な「選択と集中」を繰り返しながら、ついに日本よりも前を走る国となりました。しかも、その状況が覆る様子は全くありません。
日本旅行に毎年のように行くシンガポール人が多くいますが、その理由はずばり「日本の方が安いから」なのです。
この状況は、旅行だけではなく、ビジネスでも同じで、最近はシンガポール企業から「日本に進出したい」とご相談を頂くことが増えてきていることにも注目です。
(2)外資系企業に優しい
シンガポールの良い所の一つとして、ルールがクリアなことが挙げられます。それは基本的には進出をしている日系進出企業に対しても同じです。私たち進出コンサルタントはクライアントから「このようなビジネスでシンガポールに進出したいのだけれど、どのような外資規制があるか?どのような進出するにはどのようなライセンスが必要か?」といったご質問をよく頂きます。
よくあるご質問に関してはその場で回答しますが、私たち進出コンサルタントもシンガポールの役所に問い合わせて確認をすることは多いです。役所に足を運んで、担当の方と直接顔を合わせてお話をすることも度々あります。
この「役所に問い合わせをしてちゃんと回答がある」というのは、一見当たり前のことなのですが、明確さとスピード感は日本以上と感じています。当然、賄賂などを求められたこともありません。
そのお陰で、外資系の企業であってもちゃんとしたビジネスが出来る環境があり、その点は「シンガポールに進出した外資企業に優しい」と言えるでしょう。
例えば、サプリメント、コスメ、化粧品販売でシンガポール進出を考えられている場合、シンガポールではHSA(Health Science Authority)に対して、「こういった商品を販売しますよ」と通知をする必要があります。
また事前にASEAN全体で取り決められているルール、シンガポールが独自に設けているルールと商品の成分を照らし合わせ、例えば「規制されている成分が何グラム以上入っていないか」等をチェックします。 弊社はシンガポール進出コンサルティングのサービスメニューの一つとして、クライアントのシンガポール初進出商品をテスト販売をして頂ける弊社直営小売店「Melo!」をサマセットにて運営をしているのですが、
日本の商品はユニークな物が多いので「これはサプリメント?食べ物?」「これはジュース?お菓子?」というように線引きが難しいものがあります。
(Melo!については、以下のページをご確認ください。)
例えば、ゼリータイプのサプリメントを私たちのお店で販売しているのですが、「美白ゼリー」はサプリとして販売出来ましたが、「青汁ゼリー」は食べ物として認識されました。
少しトリッキーですよね。
ただ、先ほどもお伝えしたようにシンガポールは問い合わせをすれば、シンガポールに進出をした外資系企業であっても、ちゃんと役人が回答をくれますので、変に不安になる必要はありません。
不明点があれば、弊社の進出コンサルタントからシンガポールの役所に問い合わせることが可能ですので、お気軽にご連絡を頂ければと思います。
また、シンガポールの法人税と法人設立については、弊社サイトに掲載している以下のページで詳細なレポートを確認頂けます。
(3)人材のレベルが高い
シンガポール人は勉強熱心だなと感じることがよくあります。英語、マレー語、日本語、中国語を操る私の同僚は5つ目の言語として、韓国語教室に毎週通っています。休み時間には宿題の問題集を解いたりしています。
弊社が従業員に対しスキルアップのための補助制度を設けてはいますが、この他にもシンガポール国籍の社会人であれば誰でも年間$500受け取ることができるSkills Futureという政府運営の補助制度もあります。
この制度を使って、語学や会計、プログラミングなどを学習しています。私の同僚はマーケティングのコースを受講していました。
また、これはニュースでもよく言われる話ですが、シンガポール国立大学はアジアで一番の大学として様々な大学ランキングにランクインしており、当然、東大より京大より順位は上です。
多くの多国籍企業がシンガポールに進出し、グローバルヘッドクオーターを置いていますので、マネージャー人材も着実に層を厚くしていっています。
間違いなく向上心と素質はあるので、後は進出をした日系企業とのカルチャーに合うか合わないかだと思います。例えば、いわゆる「飲みにケーション」でチームを鼓舞する文化は、日本ほどありません。弊社も月に一度の誕生日会をランチタイムに開いたり、旧正月祝いの時にディナーを開いたりするくらいです。弊社の定時は18時ですが、18時過ぎには9割は退社しています。
(4)英語でコミュニケーションができる
シンガポールの公用語は英語、マレー語、中国語、タミル語です。ほとんどのシンガポール人が2か国語をネイティブレベルで操ります。例えば、中華系シンガポール人であれば、家では中国語を話し、職場や学校では英語を話しています。
英語を生活の基本軸にして、バイリンガルになるチャンスが生後すぐに用意されているのがシンガポールです。
この「英語でコミュニケーションができる」というメリットは、海外進出をどこの国に決めるかにおいて重要なポイントと言えます。例えば、2010年代前半に進出ブームのあったミャンマー、2010年代後半に進出ブームのあったベトナムでは、基本的には英語は通じません。
進出を決めて人を雇う際、広告を打つ際など、英語一本で仕事が完結することは業務効率上、非常に有利です。
また、外国人慣れしているシンガポール人は「外国人が頑張って話す英語」にちゃんと聞く耳を持ってくれます。常に異なる民族間でのコミュニケーションが必然的に起こる環境で育ってきたので、聞き取りにくい英語にも理解を示してくれやすく、英語を話す心理的なハードルは低いと思います。
全く最初英語が出来なかった弊社のクライアントも、一年くらい経つと「電話でも7割くらい何を言ってるのか分かるようになった」と言っていました。
少なくとも中学と高校で英語の授業を受けてきた日本人ですが、これが例えばベトナム語だったとしたら、言語習得の努力量は全く変わってくるでしょう。
(5)ハブとしてのシンガポール
シンガポールの人口は560万人程度です。内需が小さな国ですので、シンガポールの現地企業は最初からグローバル展開を見据えています。
例えば、弊社と取引のあるシンガポールの現地代理店などは、東南アジア周辺国だけでなく中国、インド等にも進出をしています。
中国語やタミル語を話さず、文化的な理解の乏しい日本人よりも、同じ言葉と文化を持つ中華系やインド系のシンガポール人の方が取引がスムーズなのは容易に想像して頂けるかと思います。
さらに、日本からシンガポールを経由して、また海外に商品を送るという「物流ハブ」のスキームは、自由貿易協定(FTA)によってさらに強固なものにされています。
シンガポールとFTA締結国との関税が安いので日本から直接送るよりも、シンガポールを経由する方が安くなるのです。
日本外務省のWEBサイトに興味深い内容があったので転載します。
なぜ、日本最初のFTAの相手が、シンガポールだったのですか?
答) シンガポールは、
- (1)日本の主要な貿易・投資相手国の1つであり、
- (2)貿易自由化、市場経済体制等、経済運営における政策の基本を日本と共有しており、
- (3)ASEANの原加盟国である同国との関係強化は、日本の東南アジア諸国との関係を深化させる上で大変有意義です。
このような様々な考慮に基づいて、シンガポールと協定を締結することとしました。
シンガポール進出5つのデメリット
『シンガポール進出5つのデメリット』動画解説版
(1)就労ビザ取得のハードルが高い
外国人がシンガポールで就労するためには就労ビザを取得する必要があります。
その就労ビザ取得のハードルがとても高いため、進出した日系企業が日本人従業員を簡単に雇うことが出来ないということがよくあります。これはシンガポール国民の雇用を優先するためです。
進出後、新しく日本人を採用したはいいが、ビザが却下されるケースも多発しており、弊社にたくさんのご相談を頂いています。就労ビザ却下については以下の弊社記事をご参考にして頂ければと思います。
EP/就労ビザ却下(リジェクト)/ウォッチリスト入りについて最新版
シンガポールに進出を考えている企業は、進出時から採用戦略をきっちりと立てておくことをおすすめします。戦略なく進出をしてしまうと、後で痛い目を見ます。
一方で、シンガポールの総人口約570万人のうち約167万人は外国人。約30%が外国人ということになります。ちなみに日本は2%程度なので雲泥の差です。
就労ビザ取得の条件については以下の弊社記事をご参考にして頂ければと思います。
(2)生活コストが高い
The Economist誌が発行している世界中の生活費に関するレポートの2019年度版で、シンガポール、パリ、香港が一番に選出されています。
日本のワンルームタイプのような部屋でもシンガポールで借りようとすると15万円くらいかかるのが普通です。
食事については比較的安く抑えやすいです。ランチはフードコートで食べれば500円くらい。
お酒は生ビール税込800円くらいが相場だと思いますので東京と同じくらいだと思います。
社用車以外で車を持っている日本人の方には出会ったことが正直今までありませんが、プリウスが一台1,500万円くらいするようです。タクシーを使って車で移動する方が断然安く上がるので、車を買うという選択をする外国人は物凄いお金持ちか特殊な事情があるのだと思います。
一方で住民税がなく、所得税も断然安いので、実質的な出費は日本よりも低くなる人が多いのではないでしょうか。
(3)既に多くの日系企業が進出している
シンガポール日本商工会議所には約800社が登録をしています。実際にはこれ以上の企業がシンガポールに進出をされていますが、この数字を多いと取るのか、少ないと取るのかは、何を基準とするかで変わってくるとは思いますが、「シンガポールに進出したら何でもブルーオーシャン状態」という時代は昔話です。
ちなみにミャンマーの日本商工会は約400社、ビエンチャン(ラオス)の日本商工会は約100社です。まだまだ進出する企業は増えていくでしょう。
ショッピングモールを歩いていると、本当に日本から進出してきているコンテンツの多さに驚きます。若者がよく訪れる313 Somersetの地下の飲食エリアは、ほとんどが日系進出企業です。
シンガポール人の友人が「シンガポールが日本に乗っ取られたんじゃないかと思うことがある。今度は平和なやり方で。」とブラックジョークを言っていました。それくらい目に見えて日本の進出は進んでいます。
裏を返せば日本のコンテンツ受け入れられやすい条件が整っているからであり、Don Don Donkiに代表されるようにシンガポール進出ブームが去った後でも、大成功する日系進出企業は存在します。
(4)内需が小さい
人口570万人のシンガポールと、人口1億人以上の日本を比べると、内需の差は圧倒的です。
「シンガポールにはお金持ちが多いから」という理由でシンガポールを選ばれる方もいらっしゃいますが、日本の方が富裕層の数が多いことも忘れてはなりません。
例えば、商品を輸出して儲けるビジネスモデルでシンガポール進出をする場合は、特に内需が小さいことを考慮に入れた上でビジネスを組み立てる必要があるでしょう。(シンガポールのハブ機能を活かして、海外に進出している代理店とパートナーシップを組む等)
(5)従業員の給料が高い
スイスの国際経営開発研究所(IMD)「世界人材ランキング2019」で、シンガポールは世界10位。アジアで10位内はシンガポールのみでした。日本は35位です。(NNAニュースより)
当然、従業員の給与は高くなります。シンガポールの国立大学出身者の初任給の平均は約28万円と言われています。
また、日本人の就労ビザを発給するために、高い給与を支払う必要もあります。S Pass所持者の配偶者にビザを発給する為には最低月約48万円の給料を支払わなければいけません。今後この金額はアップすると言われています。
「海外の安い労働力を使って、商品やサービスのコストを下げる」という進出ビジネスモデルにアジアで最も不適切な国がシンガポールだと言えます。日本の地方に進出をする方がよっぽど安く済むでしょう。
ある日突然、海外進出が新しいミッションになった時、あなたならどうしますか?
一言で海外進出と言ってもそのレベルや進出形態は業界、商品・サービス、企業規模、市場などにより様々です。海外進出と言うと、海外に法人を設立したり、工場を建設したりと大規模な進出を思い浮かべられる方もおられると思いますが、海外進出は順を追ってスモールスケールで進めていき、大きな市場があると判断できたときに本格進出するということができます。
重要なのは、進出したい市場に可能性があるのかということをより具体的にスモールスケールでテストマーケティングをしてから、より具体的で実現可能な進出計画を引くことです。
進出事業計画を引くためには、どの市場にどのタイミングでどのような価格帯で、どのようなビジネスモデルで参入するかを決定するための市場調査を行うことが不可欠です。
これからシリーズで弊社のお客様の進出のあゆみを紹介していきたいと思います。自社内に英語ができる人材がいない、どれくらいの投資になるのかわからない、認証が取れるかわかってから踏み出さなければなど、様々不安を抱えて海外進出を躊躇されておられる企業の皆様の一助になればと願っています。
【お客様の進出事例:教育コンテンツ会社の場合】
子供向けのSTEAM教育をシンガポールに展開し、進出したいというお客様がいらっしゃいました。日本では塾、学童保育などでフランチャイズ展開されています。
1
ライセンスは必要?
進出検討段階でまず重要なのはこのプログラムを持っていくために必要なライセンスなどがないかを確認することです。教育コンテンツで進出する場合、国によっては大変厳しいライセンス要件があり、外資が参入する障壁が高いことがほとんどです。弊社の進出コンサルタントが最初にすることはお客様の商品・サービスと日本でのビジネス形態を理解し、関係省庁がどこで、どのように説明することが最もお客様がしたいと思っているビジネスが最大限できるようになるかを調査することです。シンガポールの場合は教育省に直接ライセンスの要不要を確認することができますので、英語版のコース内容説明プレゼンテーションを進出コンサルタントが作成し、実際に教材を持って教育省に問い合わせをしました。そこで回答を得ることができ、法的なライセンス要件はクリアできるため、シンガポール進出は可能との判断がまずできました。
2
体験会開催
シンガポールに進出が可能と判断された後、まずご提案したのが進出前に市場調査としての体験会を開催することです。教育コンテンツの場合、商品を売るビジネスと大きく違うのが体験せずに良さを伝えるのが難しいということです。日本でも体験会をされることがあるとお伺いしたため、まずはお客様が慣れておられる日本語で体験会を開けるよう日本人会の会場を使い、日本人のお子さん向けに無料体験会を行うことになりました。このように現地の進出コンサルティング会社を使うことで、在星日本人会在籍企業主催の無料体験会を開催することができ、物価の高いシンガポールでもコストを抑えながらターゲット集客をことができます。
市場調査としての体験会を開催する際に重要なのは、体験会でどんな情報を集めたいかということを明確にすべきだということです。保護者および子供から率直なプログラムへの感想を聞き出すこと、シンガポールの子供が通えるプログラムにするためにはどのような進出方法が最適かという情報を得るための体験会とゴールを設定し、進出の準備をしていきました。
3
海外での集客ってどうするの?
現地の日本人向け日本語メディア、Facebookを駆使して集客を行いました。日本で人気のSTEAM教育のシンガポール初上陸そして無料体験会開催ということで、1体験会10人の定員をはるかに上回る応募がありました。定員は、体験会情報リリース後数時間で埋まってしまいました。市場の反応の良さを確認できました。
次にすべきことは、体験会を通して集めたい情報を確実に聞き出すアンケート用紙をきちんと準備すること、日本での実績やどのようなコンテンツなのか説明資料を用意し進出前にファンを獲得し、市場を温めておくことです。体験会は大成功でした。アンケート結果からシンガポールの子供のスケジュール、いくつの習い事をしているのか、習い事の価格感、受け入れられる価格帯、開講の場所や指導者像の希望などを細かく聞いていきました。ここで気を付けたいのは、シンガポールにも個人情報保護法(「Personal Data Protection Act」という)があります。日本企業としてはシンガポール初上陸、体験会開催!というニュースはとてもプロモーション価値があります。体験会での子供たち、保護者の様子を写真やビデオで撮影したり、また、今後体験会で集めた情報を分析したり、検討後、本格進出を決定した場合にご案内が流せるようしたいものですが、コンプライアンスの観点は忘れずに進出の準備をしておきましょう。
第1回目の体験会の定員が一瞬で埋まるという嬉しい悲鳴を次のアクションにつなげるため、体験会申込からウェイティングリストが作成できるウェブページを作成しました。これにより、次回開催までに興味のある保護者のリストを獲得することができ、2回目の開催も定員がすぐに埋まってしまいました。これにより、シンガポールにおける日本人市場には確実にヒットするという確信を持つことができました。
4
ターゲット顧客は誰?
進出計画を作成する際、その市場で誰を対象に進出するかを考える必要があります。日本人だけに提供するのか、ローカルに向けた展開もしたいのか。例えばシンガポール在住日本人の人口はわずか36,000人しかいません。その中の子供と言うと本当に限られた市場でしかありません。当社クライアント様がめざすのはローカル市場でしたので、満を持してローカル市場の反応を見るべく、ローカル向けの体験会を開催することにしました。前回の体験会で定員オーバーとなった日本人の子供向けと同時に英語版でローカルの子供向けにも体験会を開催しました。この体験会の子供・保護者のフィードバックから、シンガポールのローカルの学校ではSTEAM教育が日本以上に進んでおり、コーディングやプログラミングの部活動が多く存在し、実績があることなどが分かりました。ローカル向けに売り込んでいくにはハードルが高そうだということが分かりました。同時に、ローカル向けのマーケティングのポイントは日本人に向けたものと変えていかなければならないことが明確に分かりました。
5
満を持して展示会出展
アンケート結果をもとに進出形態、価格感のイメージがつかめたところで、いよいよ加盟店獲得にむけて動き出しました。ライセンスモデルで進出をすると決定したことを受け、ライセンスモデルの説明とプログラムの優位性をきちんと伝えるプレゼンを用意し、ライセンスオリエンテーションを開催しました。また、シンガポールでは、ライセンスモデルのビジネスを集めた国際展示会も毎年開かれています。展示会出展でブランド認知度を世界に知らしめ、同時にシンガポール周辺ASEAN諸国および世界中のライセンシーになりたい企業や個人と出会い、商談を進めるリードを獲得することができました。
海外での展示会では、JETROや都道府県ごとにJAPANパビリオンと言っていくつかの日本企業を集めて団体で参加できるものもあります。1社だけで参加するのでは心許ない時にも存在感を大きくアピールするチャンスがあります。弊社クライアント様が参加された展示会にはその年、JAPANパビリオンはありませんでした。しかし、シンガポール企業である弊社を通してお申し込みされたことで、ホスト国の特権である、展示会会場で一番目立つ場所に通常設置される「シンガポールパビリオン」に展示ブースを構えることができ、また、シンガポール政府がシンガポール企業をサポートするために特別に用意した広告枠を利用することができ、より多くのブランドアピールの機会を得られたことはラッキーでした。
6
シンガポール加盟店が求めているサポートとは?
ライセンスオリエンテーション、そして展示会で出会ったローカルのパートナー候補者が口をそろえて言うことは、「日本本社側からどのようなマーケティングサポート、トレーニングサポートが得られるか」ということでした。これは、ライセンスフィーの高低、マージンの大小以上に重要なポイントとして質問されます。長くパートナーとして一緒にビジネスを育てていくことができるかどうか、困った時に親身に相談に乗ってくれたり、サポートしてくれるか、日本側で持っている知識やノウハウ、開発ストーリー、研究結果などを惜しみなく共有し、現地でのセールスのネタをより多く与えてくれるかということを確認したいのです。これは現地の人からは、「マーケティングサポート」という言葉で聞かれることが多いです。
これまでいろいろなご相談を受けてきた中で、ディストリビューターにその国での展開やセールスは任せてしまいたいという企業様の声を多く聞きますが、そういう姿勢ではなかなかパートナーとして手を挙げてくれる人は見つかりにくいのが現実です。日本本社側で提供できるマーケティングサポートをきちんと決めて交渉に入ることが大切です。
弊社のクライアント様の場合、ライセンスモデルで展開するサービス業ですので、市場に出していく情報の統一と複数存在するライセンシー(加盟店)間でのサービスの質の担保をする必要がありました。そこで、クライアント様は、シンガポールにおけるBtoC向けの展示会に加盟店と共に参加したり、Facebookページを開設して保護者向けに情報提供や定期的なポスティングをしたり、子供が参加できる大会や海外の優秀な生徒の日本招致を約束することで子供・保護者、そして、加盟店のやる気を向上させたりと様々なマーケティングサポートの努力をされています。
7
シンガポールから世界へ
シンガポールは年間100以上の展示会が開かれていることで知られ、世界中から新しい情報やビジネスチャンスを求めて展示会に参加する人が集まります。工夫を凝らしたテーマの展示会も多数開かれています。弊社のクライアント様も、初年度に参加したライセンス展示会とは別に、翌年はEduTech展示会に参加されています。そこでシンガポールの教育関係者だけでなく、フィリピン、インドネシア、インド、マレーシア、タイ、ベトナムと多くの国からの問い合わせや引き合いを集めることに成功されました。これから限られた会社内のリソースをフル活用しながら次の進出展開に向けて準備をされています。
【お客様の進出事例:健康サプリメントを売りたいお客様の場合】
弊社に寄せられるお問い合わせの中で最も多いものは、日本のサプリメントと化粧品を売りたいというご相談です。日本で“とてもよく売れている”“こだわりのブレンド”“たくさんの栄養素を詰め込んだ贅沢なサプリ”など、日本のメーカーの皆様の思いやこだわりの詰まった商品を持ってご相談にお越しになります。
弊社コンサルタントは、これまで様々な商材のライセンス確認および認証申請、および、販売代理店との商談、そして、弊社が直接店舗で消費者に販売してきた経験があります。
今回は、弊社がお客様と一緒に経験してきたリアルな商談体験や進出の壁を紹介し、皆様がこだわりのサプリを海外販売をご検討される際のポイント、商談成功の鍵をご紹介します。
1
ライセンスは必要?
進出検討段階でまず重要なのは、そもそも、その国に海外からサプリを持ち込んで販売することができるのか?どんな認証やライセンスを取得しなければいけないか?誰がどのように認証を取得できるのかを確認することです。
シンガポールで健康サプリメントを販売するのに、2020年3月末現在、「健康サプリメント販売ライセンス」というものはありません。ただし、販売前に政府健康科学省に「商品通知」をしなければなりません。政府へ販売する商品通知は、シンガポール法人のオンラインアカウントでしかできませんので、現地法人をまだお持ちでない日本企業の場合は、シンガポールの販売代理店にお願いするか、弊社のようなコンサルタント会社に依頼することが可能です。シンガポールの場合、「商品通知」を提出できる会社が1社に限定されるという法律はありませんが、ASEANの多国では、販売代理店は1社しか登録できないなどの制限がある場合がありますので、特に初期段階で販売代理店との信頼関係が十分に構築できていない場合や、販売代理店の販売能力の判断ができていない場合は販売代理店に任せっきりにするのではなく、日本の企業側もルールを確認したり、手続きの進捗を確認するなど、イニシアティブを取っていくことをお勧めします。
販売の通知をするためには、政府に提出すべき書類(もちろんすべて英語でなければなりません)がたくさんあります。その商品が健康健康サプリメントに該当するのか、どのような原材料が使われているのか、禁止成分を使用していないか、生産された健康サプリメントの検査証、生産工場の品質検査証、どのようなパッケージとラベル表示をするのかなど、確認すべき点は多くあります。
シンガポールで健康サプリメントを販売する上で特に重要なポイントを以下に3つご紹介します。
1. シンガポールでの健康サプリメントの販売の一番最初のステップは、その商品が「健康サプリメント」に該当するかを確認することから始まります。シンガポールにおける「健康サプリメント」の定義は、「栄養補給または、人体の健康的な働きを維持、サポートするために摂取する商品」です。そのための条件として、以下の5つをクリアしている必要があります。
- 1)以下の成分のうち一つ以上を含んでいること。
ビタミン、ミネラル、アミノ酸(天然・合成)、ヒト以外の動物や植物からの抽出物、分離株、濃縮物
- 2)カプセル、ソフトジェル、タブレット、溶液、シロップ、その他の錠剤の形をしていて、小容量で投与されるものであること
- 3)食事の代わりに置き換えて単体で摂取するものではないこと
- 4)法律によって健康サプリメント以外と定義されていないこと
- 5)注射や目薬として投与されないこと
2. 禁止成分が使われていないか、一日の許容摂取量以上の内容物を含んでいないか シンガポールでもASEANの地域基準をもとに、使用禁止成分がありますし、また、使用が認められているモノでも、一日の摂取量に制限がある物質もあります。禁止成分の一覧表は政府のウェブサイトでも公開されていますので確認ができます。シンガポールにおいて使用が禁止されている成分が入っている場合は、製品規格を変えなければ輸入、販売することは出ませんので慎重に確認する必要があります。
3. 正しいラベル表示をしているか、誇大広告で消費者に誤解を与えるような説明(特に健康上の効用)をしていないかも大変重要なポイントで、政府への提出資料の一つでもあります。また、法律で、シンガポールで販売するにはラベルは英語表記されていなければいけません。初期段階では、日本のパッケージに英語のラベルシールを貼ることで販売ができますので、流通量が増えてきた際に完全英語パッケージを作成する等、段階を踏んで進出をすることもできます。
2
シンガポールの販売代理店との商談で学んだ日本企業の進出時の心構え
ライセンスについてクリアになった後は、どのように販売していくかという進出形態を考えていきましょう。最も多いのは、健康サプリメントの販売をする代理店(ディストリビューター)と商談し、代理店の持っている販売チャネルを通して消費者に届けるという進出形態です。ここからは、シンガポールで健康サプリメントの商談をお手伝いしながら分かったポイントをいくつかご紹介します。
内容物だけでなく、カプセルも豚由来成分は基本NG
シンガポールは、ご存知の通り多民族国家です。7割近い国民の民族は中華系というシンガポールではありますが、シンガポールの560万人弱という小さな市場規模を考えると、ディストリビューターは、できるだけ広いターゲット層に対して販売ができるような製品仕様を求めています。シンガポールの場合、Halalマークの取得まで要求してくる代理店はありませんが、豚由来成分が入っているものの取り扱いは嫌がります。この豚由来の成分は、こだわりのサプリメントの配合成分だけでなく、日本ではとてもポピュラーなソフトカプセルでコーティングされたサプリメント、中身にコラーゲン、プラセンタが入っているものは、その原材料が豚由来であれば、必ず仕様を変えるように言われます。では何を代用すればいいのかということですが、喜ばれるのは、圧倒的に植物由来の原材料です。中華系の中には牛を食べない人もいますし、インド系を中心にベジタリアンという人もいます。植物由来がベスト、そうでなければ魚由来のものをという商談をよく現場で見かけます。
マーケティングに使える、「売れる」ためのネタが欲しいディストリビューター
シンガポールのサプリメントマーケットは成長を続けていて、販売店は、常に新しい商品、変わった組み合わせの商品を生み出すことに力を注いでいます。同時に、日本製のモノだけでなく、市場には、アメリカ、オーストラリア、ドイツ、スイス、台湾、韓国など様々な国からこだわりのサプリメントが多く出回っています。その中で戦っていくには、どれだけ商品の魅力を消費者に伝えられるかが重要で、マーケティング材料となる「売れるためのネタ」「クリニカルスタディ」「どのような科学的根拠をもとに開発された商品なのか」などの提供ができると喜ばれます。「このサプリメントの中に入っている〇〇の成分は一日何g摂取すると体の〇〇に良いとされている。」という科学的根拠はあるか?など、とても具体的な質問が商談の中で交わされている場面によく立ち会います。
所変われば…体に良いものも違う
また、国が違えば、同じ食べ物でも効用として一般的に理解されている内容がずいぶんと違ったり、また、そんな効用があるなんて聞いたことなかったということもよくあります。例えば、日本では健康に良いものとして大衆の理解を得ているものの一つに「青汁」があると思いますが、シンガポールで青汁のことを知っている人はほとんどいません。日本では、青汁が健康に良いということに疑問を持つ方はあまりおられないと思いますが、シンガポールのディストリビューターに対して「青汁が入っています」という説明をしても、青汁とは何か?どう健康に良いのか?一日の摂取量はどれくらいがいいという研究結果が出ているものなのか?などと細かい説明を求められます。海外取引の際は、「これは知っていて当たり前」という概念を捨てて、丁寧に説明をする姿勢を常に忘れずに持っていたいものです。
どんなに良いものでも市場に合わないこともある
どんなに素晴らしい商品であっても、その市場にそもそも求められていないものや、あまり知られていないために消費者への啓蒙活動に時間がかかるもの、競合他社製品の市場相場とあまりにも価格帯が異なるもの、あるいは最低発注量が大きすぎるものはディストリビューターとの商談から外れていくことが多いです。サプリメント市場は今後も伸びていくものの、競争が激しく、ディストリビューターも珍しい商品、新しい配合、1種類のサプリメントでいくつもの効果が期待できるマルチパーパスのものなど新商品の開発に余念がありません。
シンガポールの代理店にとって、日本での販売実績は商品のプレゼンテーション時のウリのポイントとして参考情報にはなりますが、決め手にはなりません。シンガポールの人にとって「日本」は同じアジアでも北東アジアで、「違う」という認識があるように感じます。人口、言語、文化、気候、生活習慣、どれをとってもずいぶん違うため、日本の販売実績があればシンガポールでも販売実績を期待できるということはありません。シンガポールの消費者は日本の消費者以上に良いものを安く手に入れるために努力を惜しみませんし、購買に対しとても慎重です。
競合他社の製品の相場がとても安価であった場合は、希少で高価な原材料を使った高級サプリメントは、マーケティングが難しい・他社商品と並べて市場に出たときに、高すぎて売れないということで、商品コンセプトは良いものの残念ながら市場に出ずに商談が終わった商品をいくつも見てきました。ただ、ディストリビューターも、常に新しい商品を求めています。商談するのは1商品だけであっても、現地のニーズを一番知っているディストリビューターを尊重し、市場を理解しよう、Win-Winの関係を築き共にビジネスを育てようという姿勢で真摯に話を進めていくことで、予定していた商品がディールにならなかったとしても、他の海外販売可能な商品を軸に、関係が続いていくことはあります。日本で売れる商品や日本のメーカーが売りたい商品と、海外のニーズが異なることはよくあります。御社の持っている商品のリストと説明文を英語で準備しておくことも大切です。
3
シンガポールのディストリビューターと共に他国展開へ
シンガポールの市場は大変小さく、ディストリビューターも、日系企業との商談をするような会社であればあるほど、シンガポールだけで勝負している会社は少ないです。シンガポールのディストリビューターとの商談中に、彼らのメイン市場がどこかということも必ず確認したいポイントです。多国籍国家であり移民の多い国でもあるため、隣国のマレーシア、インドネシアだけでなく、インド、オーストラリア、ニュージーランド、中国に市場を持っているディストリビューターも少なくありません。御社の製品が既に市場に出ている場合、また、その市場で独占販売権を与えている場合などがありましたら、シンガポールのディストリビューターの稼ぎ頭である市場に持っていけない可能性もあるため、特に注意しなければなりません。
ライセンスにも関係してきますが、シンガポールでは必要のない場合でも、越境して商品を卸そうと計画をしている場合、持っていこうとしている国ではライセンス登録、提出書類が多くある場合があり、商談に時間がかかる場合もあります。
また、シンガポールは年間100以上の展示会が開かれていることで知られ、世界中から新しい情報やビジネスチャンスを求めて展示会に参加する人が集まります。サプリメントに関する展示会ももちろん開催されており、そこでシンガポールのディストリビューターだけでなく、東南アジア諸国を始め、ヨーロッパ、アメリカ、中東、インドなど様々な市場からの引き合いを集められたクライアント様もいらっしゃいます。また、商談をしディールとなったディストリビューターと良好な関係値を築いたことで、自社でブースを出すのが難しくても、ディストリビューターのブースに自社商品をさらにいくつか置いてもらえたという会社様もいらっしゃいました。いかにWin-Winの関係を築いていけるのかが海外進出成功のための重要なポイントと言えます。
【お客様の事例:化粧品を売りたいお客様の場合】
1
ライセンスは必要?
シンガポールで化粧品を販売するには、政府の健康科学省に商品登録をしなければなりません。(いわゆる、政府の認可を取るという行為です。)政府に販売許可を得るための商品登録は、シンガポール法人のオンラインアカウントでしかできませんので、現地法人をまだお持ちでない日本企業の場合は、シンガポールの販売代理店にお願いするか、弊社のようなコンサルティングファームに依頼することが可能です。シンガポールの場合、「商品通知」を提出できる会社が1社に限定されるという法律はありませんが、ASEANの国には、販売代理店は1社しか登録できないなどの制限がある場合がありますので、特に初期段階で販売代理店との信頼関係が十分に構築できていない場合や、販売代理店の販売能力の判断ができていない場合は販売代理店に任せっきりにするのではなく、日本の企業側もルールを確認したり、手続きの進捗を確認するなど、イニシアティブを取っていくことをお勧めします。商品登録をした業者がシンガポールにおける商品の販売後の責任を負うことになりますので、信頼関係の構築ができずにすべてを任せっきりにするのはリスクが上がります。
また、製品登録はせ 商品登録をするために政府に提出すべき書類(もちろんすべて英語でなければなりません)がたくさんあります。その商品が化粧品に該当するのかどうか、どのように使用されるものなのか、どのような原材料が使われているのか、禁止成分を使用していないか、生産された化粧品の製品安全検査証、生産工場の品質検査証、どのようなパッケージとラベル表示をするのかなど確認すべき点は多くあります。
シンガポールで化粧品を販売する上で特に重要なポイントを以下に4つご紹介します。
- 1. シンガポールで化粧品を販売する一番最初のステップは、その商品が「化粧品」に該当するかを確認することから始まります。シンガポールにおける「化粧品」の定義は、「人体の外部(表面)、または歯や口腔の粘膜につけることで、洗浄、香りづけ、外観の変更、体臭の矯正、またはその部位を良好な状態に保護または維持するためのあらゆる物質および調合物」です。つまり、体の中に摂取するものは化粧品には該当せず、外観をよくするためのもので治療効果が得られるものではありません。また化粧品は、以下の20個のカテゴリーのどれかで登録をします。
◆シンガポールにおける化粧品の登録カテゴリー:
①クリーム、乳液、ローション、ジェル、皮膚用オイル(手、顔、足など)
②フェイスマスク(ケミカルピーリング製品を除く)
③着色剤(リキッド/ペースト/パウダー状すべて)。例:アイシャドーやチークパウダー等)
④メイクアップパウダー、アフターバスパウダー、衛生パウダー等
⑤石鹸、デオドラント石鹸等
⑥香水、オードトワレ等
⑦お風呂/シャワー用品(バスソルト、泡、オイル、ジェル等)
⑧除毛剤
⑨デオドラントおよび制汗剤
⑩ヘアケア製品(染色剤/ブリーチ剤、パーマ剤、整髪剤、シャンプーなどのクレンジング製品、コンディショニング製品、美髪製品等)
⑪シェービング製品(クリーム、フォーム、ローション)
⑫メイクアップまたは顔や目のメイクを落とすための製品
⑬唇に塗る製品(口紅/リップクリーム等)
⑭歯と口腔ケア製品
⑮ネイルケア製品(マニキュア、ネイルオイル等)
⑯外陰衛生製品
⑰日光浴用製品
⑱日焼け用製品(太陽ではない日焼けをするための製品)
⑲美白製品
⑳しわ防止製品 - 2. シンガポールにおける化粧品販売は、ASEAN化粧品指針(ASEAN Cosmetic Directive、以降ACDと呼ぶ)に順守する必要があり、ACDに禁止成分や使用許容量等が詳しく説明されています。禁止成分の一覧表は政府のウェブサイトでも公開されていますのでご自身で確認することが可能です。シンガポールにおいて使用が禁止されている成分が入っている場合は、製品企画を変えなければ輸入、販売することは出ませんので慎重に確認する必要があります。 ここで日本のメーカーさんの注意すべき点は、日本では現在「ヒト幹細胞」を含んだ商品等がありますが、これは原則禁止です。この禁止成分を確認するのにCAS番号があると確認がしやすいので、工場などから情報を入手いただくと確認がしやすいと思います。また、化粧品業界では常に新しい成分や研究がされていますので、弊社では政府への問い合わせ代行サービスを用意しています。お気軽にお問い合わせください。
- 3. 正しいラベル表示をしているか、誇大広告で消費者に誤解を与えるような説明(特に健康上の効用)をしていないかも大変重要なポイントで、販売許可を得るための政府への提出資料の一つでもあります。また、法律で、シンガポールで販売するにはラベルは英語表記されていなければいけません。初期段階では、日本のパッケージに英語のラベルシールを貼ることで販売はできますが、流通量が増えてきた際には完全英語パッケージを作成するなど段階を踏んで進出をするなどの対応もできます。
- 4. 政府が最も気にかけている点は製品の安全性です。その証明のために、商品登録時に以下の2つの書類(英語版のみ)を提出する必要があります。GMP(Good Manufacturing Practice)証明は現在のところ必須ではありませんが、ディストリビューターによっては求めてくる場合もあります。
① 重金属検査レポート( Heavy Metal Test Report)
必須検査項目は、以下の4つ。Heavy Metal 日本語名 ASEANリミット 1 Mercury (Hg) 水銀 1ppm未満 2 Lead (Pb) 鉛 20ppm未満 3 Arsenic (As) ヒ素 5ppm未満 4 Cadmium (Cd) カドミウム 5ppm未満
必須検査項目は、以下の4つです。Microbiological
test日本語名 ASEANリミット
(Product A)*1ASEANリミット
(Product B)*21 Total Microbial
Count (Bacteria,
Yeast & Moulds)微生物の数
(バクテリア、酵母、
菌、カビ)NMT 500 cfu/g NMT 1000 cfu/g 2 Pseudomonas
aeruginosa緑膿菌 Negative per 0.1g or
0.1ml test sampleNegative per 0.1g or
0.1ml test sample3 Staphylococcus
aureus黄色ブドウ球菌 Negative per 0.1g or
0.1ml test sampleNegative per 0.1g or
0.1ml test sample4 Candida
albicansカンジダ・アルビカンス Negative per 0.1g or
0.1ml test sampleNegative per 0.1g or
0.1ml test sample
*2 Productとは、その他の製品
2
シンガポールの販売代理店との商談で分かった日本企業の進出時のポイント
ライセンスについてクリアになった後は、どのように販売していくかという進出形態を考えていきましょう。最も多いのは、化粧品を卸売販売している代理店(ディストリビューター)と商談し、代理店の持っている販売チャネルを通して消費者に届けるという進出形態です。ここからは、商談中によく聞かれることから学んだポイントをいくつかご紹介します。
シンガポール販売代理店が求めているモノとは?
- ① ローカル化:シンガポールは、ご存知の通り、多民族国家です。7割近い国民の民族は中華系というシンガポールではありますが、シンガポールの560万人弱という小さな市場規模を考えると、万人に対して販売ができるような製品仕様をしていることが求められます。化粧品の場合、ムスリムの方が使用ができないアルコール成分が入っている製品は敬遠される傾向があります。また、一年中真夏のシンガポールは、季節によって化粧品を変える日本とは違います。この気候、そして暑いから化粧自体をあまりしないという国民性を理解した商品開発が大切です。
- ② ブランディング戦略:化粧品などの場合は、効果的なブランディングでファンを獲得することが非常に大切です。日系企業の場合、生産者側の思いやこだわりを前面に押し出した販売広告をすることが多いですが、シンガポールの消費者が求めているのは、どのような効果が得られるのかという消費者メリットや消費者があこがれるようなアイコニックなイメージを確立できるかが大切です。
- ③ 売るための「ネタ」:日本での販売実績はその一つの指標となりますが、現地消費者の「声」もとても重要です。世界中の製品が集まるシンガポール市場は、消費者にもたくさんの選択肢があり、その中で選ばれるのは大変な努力が必要です。化粧品は、販売店やメーカーが伝えたいこと以上に、消費者レビューの高評価が消費者を納得させます。
3
シンガポールから世界へ
シンガポールは、人口からもわかる通りとても小さな市場です。しかし、シンガポールは年間100以上の展示会が開かれていることで知られ、世界中から新しい情報やビジネスチャンスを求めて展示会に参加する人が集まります。シンガポールで毎年行われている「ビューティーアジア」には世界中から最新のイノベーティブな製品を紹介するベンダーそして、最新の製品を求めるバイヤーが集まります。シンガポールでの展示会出展を通して世界中のバイヤーと出会い、どこに御社製品販路拡大のチャンスがあるのかという感覚をつかむことができます。弊社では、シンガポールの展示会出展に関わる申請代行やその後の代理店との交渉を行うサポートを提供しています。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
弊社では、日本企業のシンガポール進出に特化した進出コンサルティングを提供しております。
ビジネスによってシンガポール進出のスキームは様々です。
是非、お気軽に進出のご相談を頂ければと思います。